完璧なステアリングの追求。4シリーズ クーペ

この記事を読むのに必要な時間:約0分
ステアリング・ホイールとコラム、ジョイント・パーツ。これらのコンポーネントの性能のみがステアリングのパフォーマンスを左右すると考えているなら、それは大きな間違いです。BMWの卓越したステアリングがどれほど精巧に作り込まれているか、そして独特のフィールはどのようにして生まれるのかを、2人のスペシャリストとともに見ていきましょう。場所はミュンヘンの東、アシュハイムのBMWテスト・コース。デビューを前にした、ニュー4シリーズの開発の真っ最中です。

2020/7/27

現在、ステアリング開発の主軸を担うのはコンピューターです。しかし、微調整を行うエンジニアやセットアップを行うドライバーの役割は、今なお極めて重要な地位を占めています。

彼らが用いる《真にプロフェッショナルなチューニング・ツール》とは何か。案内してくれるのは、ステアリング開発部門のグループ・リーダー、シュテフェン・コッホと、ドライビング・ダイナミクス開発部門に所属するクリスティアン・ハイス。BMWのステアリングを知り尽くした2人です。

すべてのパーツに一貫性を持たせる。

ステフェン・コッホが話し始めます。「チューニングの詳細を明らかにする前に、BMWのステアリング・システムについて簡単にご説明しましょう。完璧なステアリングのための大前提として、すべてのコンポーネントが一貫性をもって開発されているということが挙げられます。トラック・ロッド、ステアリング・ギヤ、そしてステアリング・コラム。どれも設計の段階から、チューニングを考慮して作られていなければなりません」。

身振り手振りを交えながら、コッホの説明は続きます。「BMW独特のステアリング・フィールを妥協なく実現するために、我々は開発段階から、サプライヤーと緊密に連携を取っています。複数のパーツを組み合わせた形のコンポーネントが納入された後、まず我々が行うのは、それがすべてのBMWモデルとの互換性があることの確認です。コンポーネントを各モデルに合わせるための調整は、サプライヤーではなくすべてBMW社内において行われます」。
ここで、語り手はバトン・タッチ。チューニングのエキスパート、クリスティアン・ハイスの出番です。

ステアリングに息づく、BMWの哲学。

「反発と振動の減衰、そして操舵の補助。この3つが、ステアリング・フィールにはとても重要です。走行中、3つの要素は互いに影響し合いながら変化を続けます。同じシリーズにもかかわらず、パワー・ユニットの種類に応じて異なるチューニングが施されていることからも、エンジニアたちがBMW独特のフィールを実現するためにどれほど力を注いでいるのかは明らかでしょう。新しい4シリーズもベースのチューニングは同じですが、それぞれのモデルごとに微調整が行われます」と、コッホは目の前のニュー4シリーズ クーペを指して解説します。

「たとえば、凸凹の激しい工事中の道を走る際、ステアリング・ホイールで小刻みに方向修正をしなければならないような状況を想像してみてください」と、コッホは何度も細かくステアリングを切るようなジェスチャーをしながら話を続けます。「大げさに言えば、BMWはこのような修正がまったく必要ないように設計され、さらにチューニングが施されているのです」。ハイスが頷きながら言葉を継ぎます。「そう、完璧にチューニングされたステアリングは、気づかぬうちに路面の悪さやドライバーの小さな操作ミスをカバーしてくれるのです。これにより毎日のドライブはもとより、アグレッシブな走りの時においてもコントロールはよりシンプルなものとなります。それは結果として、安全性の向上にもつながります」。

すべてのドライバーへ歓びを届けるために。

BMWのステアリングには、明確なひとつのルールがあります。それは『どのようなレベルのドライバーにとっても、クルマの挙動は常に予測可能なものでなければならない。』というものです。

コッホはそれをこのように表現しました。「クルマは常に意のままに操れるものでなければなりません。そしてあらゆる速度で、ドライバーの期待に応えられるということも非常に重要です。開発中のニュー4シリーズには、さまざまなスタイルに対応するドライビング・パフォーマンス・コントロールが備わっています。スイッチを押すだけで、ドライバーの好みに応じた走行モードに切り替わります。もちろん、ステアリングの特性も自動的に調整されます」。

アシュハイムのテスト・コースでは、ニュー4シリーズのチューニングを行うBMWのエンジニアたちが、このドライビング・パフォーマンス・コントロールにさらなる微調整を施します。ハイスはこのチューニングについて、次のように解説します。

「スポーツ・モードでは、路面からのフィードバックがより明確に伝わるようにしました。限界に近い領域では、ハンドリングがいっそうクリアになります。これはつまり、ドライバーはクルマの操作感覚が軽くなればなるほど、限界に近づいているということがわかるということです。一方のコンフォート・モードでは、日常的なドライビングにおける操作のしやすさに重きを置きました。取り回しの快適さはもちろん、ステアリングの“重さ”についても各モデルの車両重量に合わせてそれぞれ調整されます。ステアリングには適度な“重さ”がないと、ドライバーが意図せず操作してしまう危険性があるのです。このようにして、それぞれのモデルにステアリングの個性、とでもいうべきものが与えられてゆくのです」。

妥協せず、突き詰める。

BMWは『全体的な調和こそが、最大限の安全をもたらす』と確信していますが、シリーズやモデルごとに求められるキャラクターやニーズが異なることについても深く理解しています。

たとえばニュー4シリーズのステアリングは、コンフォートを志向する7シリーズのようなラグジュアリー・モデルに比べてよりダイレクトな味付けがなされます。しかしどちらの方向にチューニングされたとしても、安全性については高く厳格な基準のクリアが必須条件です。コッホとハイスも「その点については、一切妥協しません」と、口を揃えます。

「さらにBMWでは、ステアリングのチューニングにおいて同一シリーズ内で一貫性を持たせるため、同じチームのエンジニアたちがそのシリーズのすべてのモデルを担当することになっています」とハイスが少し誇らしげに述べます。

「各シリーズのステアリングには、それぞれ独自のベース特性を持たせなければなりません。たとえばニュー420d クーペとニュー430i クーペでは個性の味付けが異なりますが、ベース特性は同じなのです」。

最後は、感覚と経験。

それでは、ニュー4シリーズのステアリングが、チューニングを経て量産化に至るまで、いったいどのくらいの時間がかかるのでしょうか。ここアシュハイムでは、ひとつのバリエーションのチューニングに、コッホとハイスのチームをもってしても約2週間を費やしました。しかし、ニュー4シリーズだけでも11のバージョンがあることを考えると、すべてを完了するにはさらに数カ月が必要です。つまり、新開発のステアリングがアイデアの段階から量産化、発売にたどり着くまでには数年かかることもあるのです。そしてそのプロセスには、非常に多くのBMWスタッフが関わっています。

ところで、冒頭でお話しした《真にプロフェッショナルなチューニング・ツール》のことを覚えておいででしょうか。種明かしをすると、これは《人間の感覚や経験》のことです。ドイツ語ではこれを、口語で『おしり』を意味する『Popo』を用いて“Popometer(ポポメーター)”と言います。

「我々にとって、クルマの挙動に関する情報を主観的に影響してくれる“Popometer”は、依然として最も重要で絶対的なチューニング・ツールです。なぜなら、このツールがもたらす感覚や経験の代わりになるコンピューターは、世界中のどこにも存在しないからです」と、ハイスはその重要性について語ります。「コンピューターを用いたステアリング開発の後、アプリケーション部門の作業になると、そこから先はすべて、モデルの個性をチューニングする作業になります。そこで仕上げを行う際に不可欠なのが、この“Popometer”なのです。つまり、完璧なステアリングはコンピューターではなく、最終的には人間の感覚と経験によって作り上げられるものなのです」。

テスト・コースでは今日も、コッホとハイスがBMWらしいフィールを追い求めて、ニュー・モデルのチューニングに勤しんでいます。彼ら2人の“Popometer”が『駆けぬける歓び』を追求するためだけにプログラムされていることは、言うまでもありません。

ニューBMW4シリーズ、今秋登場。

詳しくはこちら

ニューBMW 4シリーズ マガジンへのご登録

ニューBMW 4シリーズ マガジンではここでしか手に入らない限定イベントなどの情報を、ご登録いただいた方だけにお届けします。
ご登録はこちら