BMW 8シリーズ グラン クーペを新たな極みへと導く名匠たち。

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BMWの革新的プロジェクトを紐解く連載の第2回。漆芸家の岡田紫峰氏とデザイナーの永島譲二の対話から、創作に賭ける熱情、プライド、ヴィジョンを紐解いていきます。【第2回】

2020/7/9

BMWと日本の名匠プロジェクト

世界をリードする最先端のテクノロジーと妥協なき美意識を融合し、特別な一台を創るBMWの革新的プロジェクトが始動しました。主役は、BMW 8シリーズ グラン クーペ、そして京都に工房を構える世界的漆芸家の岡田紫峰氏です。

BMWの美学を最も刺激的に体現したラグジュアリー・クーペ。

革新的なドライブトレイン、シャシー・コンポーネントの完璧な連携で、ハイパフォーマンス・スポーツカーの限りない歓びと興奮を呼び起こすBMW 8シリーズ グラン クーペ。

スポーツカーを凌駕する俊敏かつダイレクトな走りと優雅で上質な乗り心地とを究極的なまでに高次元で融合。さらに4ドアが生み出す広く快適な空間を持ちながらも高いボディ造形技術でしか成し得ない息を呑むような美しいノッチ・バック・スタイルを実現。
それはまさしく、「駆けぬける歓び」の頂を極めるラグジュアリー・クーペの革命であり、美と技の結晶です。

冷たい雨が降りしきる2月。BMW AG(ドイツBMW本社)BMWデザイン部門 エクステリア・クリエイティブ・ディレクターの永島譲二は京都を訪れていました。その目的は、漆芸家・岡田紫峰氏が主宰する「漆芸工房紫雲」を探訪すること。ここで岡田氏の作品に触れ、対話を交わしながら、今回のプロジェクトの真髄を探るためです。

工房の引き戸を開けると、そこには見事な技術に彩られた氏の作品や、修復途中の漆芸品などの数々とともに、氏が手がける、プロジェクトの鍵を握るものがありました。

使い込まれ、しかし丹念に手入れされた細筆で、作品に命を吹き込む岡田氏。この作品、そしてこのプロジェクトに込める想いとは。

対極にあるものが出会うことで生まれる、至高のケミストリー。

「自動車産業というのは、いわば世界の最先端を走っている。一方、我々が取り組んでいる漆芸とは、日本だけでも縄文時代からの長い長い歴史があります。その時間のズレのようなものをどう繋げていくか。私自身も全く初めての試みだからこそ、ぜひやってみたいという気持ちで挑戦することを決めました。自分がこれまで創り続けてきた世界を車の中に組み込む。この新しい挑戦への抗い難い好奇心ですね」(岡田氏)

「まさにおっしゃられたとおり、ひとつには時代的にも技術的にも最先端のものと、究極的にアナログなものが出会うというおもしろさ。と同時に、西洋で生まれた自動車と、その対極にある東洋の伝統工芸。対極の文化が出会うおもしろさ。今まで誰も見たことがなかった何かが生まれることに、とても期待しています」(永島)

「黒」が秘めた普遍的なラグジュアリネスが結ぶ、深い縁。

今回の「BMWと日本の名匠プロジェクト」の主役であるBMW 8シリーズ グラン クーペは、ダーク・ブラックの色調の中に宝石のアズライト(藍銅鉱)のような高貴なブルーの煌きを放つ「アズライト・ブラック」というボディカラー。一方、漆の黒は「漆黒」の呼称でも知られる深くて艶やかな黒。
艶やかで深い色調に込められたその意味とは。

「もともと、日本の漆芸品がヨーロッパに輸出されるようになったのは16世紀。ヨーロッパに渡った漆は、貴族など当時の特権階級の手に渡りました。漆の艶やかな光沢は瞬く間に彼らの心を魅了しました。それというのも、ヨーロッパには黒い塗料がなかったからです。この黒い塗料は科学者たちの心をも虜にし、漆に似た塗料を作り出そうと血眼になって研究を行いました。最終的にドイツで黒い塗料を開発することに成功、それが”ラッカー”という塗料で、まずはピアノに塗られたのです。なぜピアノかというと、ここからは私の推論ですが、当時からピアノはステイタス、そしてラグジュアリーを象徴する楽器だったからだと思うのです。高級、上質、威厳、そして美。それを究極に突き詰めた色が黒なのではないか。だからラグジュアリー・カーに黒という色がふさわしいのではないかと思います」(岡田氏)

「ヨーロッパにいると肌で感じるのですが、やはり自動車は馬車の延長にあるもの。馬車の伝統も、おそらく黒の塗料と非常に密接だったのではないでしょうか。馬車の車体は鉄板をハンマーで叩いて作っていたのですが、その技術がまだイタリアに残っていて、まだ職人さんがいます。実はこの技法を用いて試作車を作ることがあり、僕も実際に2台、これを作る過程を見たことがあります。今の話をお聞きして、イメージ的にリンクしますね。ピアノを塗っていた黒い塗料が手で仕上げた馬車に塗られている、そしてこの発想が今もラグジュアリー・カーに継承されている。これはとても自然な流れですよね。BMWの高級インテリア・トリムに用いられているピアノ・フィニッシュ・ブラックはまさに、その漆に由来するピアノ・ブラックにインスパイアされた塗装。そこに岡田先生の漆芸が施されるということは実に素晴らしいことだと思います」(永島)

「本物」の自動車、「本物」の漆芸。そこに込められたもの。

黒という色だけでも、根底の深い部分で通じ合う、BMW 8シリーズ グラン クーペと漆芸の世界。本物を、頂を極めていくという過程でどのような思いを共にしているのでしょうか。

「自動車のデザインは絵を描くところから始まるのですが、これを基に、工業用クレートという素材を用いた原寸のモデルを作ります。コンピュータで作る部分もありますが、スクリーンの大きさには限界がありますので、結局歪みや面の補正は目で見て判断し、行うのです。ほんの0.2mmの歪みでも、訓練と研鑽を積んだ技術者であればひと目でわかります。”本物の自動車”とは、とても難しい話ではあるのですが、この0.2mmにこだわる作り手の思いなのではないでしょうか」(永島)

「車でも漆でもそれは同じですよね。我々漆芸家も、ものを作る人間、その中で頂を極めようという志はこだわりの濃さ。いかに美しい、いかに技を込めたものを作っていくかという究極的な思いです。いわゆる機械が作り出した形と、人間がこだわり抜いて作り出した形とでは、ぱっと見は同じでも、自然と受け手に異なる伝わり方をすると思います。ものとして、見る側に納得させるものを語ってくれる。それが本物なのだと」(岡田氏)

自動車の歴史を変えるような、新しい試み。もうすぐ、その扉が開く。

「自動車の内装に高級感を出す素材といえば、クローム、ウッド、革。ほぼ100年くらい変化がなく、代わりになるマテリアルを探し続けながら、それがなかなか見つからないという時代が続いています。それに代わるものとして、例えば新しい考えですとアンビエントライトなど、”照らす”ための照明ではなく、間接照明のような柔らかい光で室内空間を演出するものも出てきています。今回の漆芸は、本当にまだ誰も手がけたことがないまったく新しい提案。それでいて、美意識とこだわりの部分で自動車と通じ合い、響き合うものをもっています。ラグジュアリネスという観点からも申し分のない、最高級のもの。自動車の歴史で、新たな可能性がひとつ広がるということに、自分自身としても強い期待を寄せています」(永島)

長い歴史の中で世界をインスパイアし続けてきた漆。この素材を唯一無比の技と美意識で芸術の高みへ昇華させる岡田氏の世界観が、自動車の最先端を駆けぬけるBMW 8シリーズ グラン クーペと融合し、いかなる革新が生まれるのか。次回、ついにその全貌をお伝えします。

岡田紫峰(雄志)

「漆芸工房紫雲」主宰。1948年京都生まれ。15歳で漆芸の世界に入り、伊藤裕司氏(日本芸術院会員)に内弟子として師事したのち創作活動を始める。その芸術性と技術は海外でも高く評価され、メトロポリタン美術館、ボストン美術館を始めとした世界各国の美術館に作品が収蔵されている。

永島譲二

BMW AG(ドイツBMW本社) BMWデザイン部門 エクステリア・クリエイティブ・ディレクター。BMW Z3(1996)、先々代BMW 5シリーズ(1996)、先代BMW 3シリーズ(2005)、BMWとピニンファリーナの初のコラボレーション・カー、BMW ピニンファリーナ・グラン・ルッソ・クーペ、BMW 3.0 CSL Hommage、BMW 2002 Hommage Con-cept、BMW Concept 8er Coupe、BMW Concept  M8 Gran Coupe等のデザインを手がける。

本プロジェクトのベースモデル、BMW M850i xDrive グラン クーペ。ゆとりに満ちた空間と息を呑むほどの美しさをたたえた、4ドア・スポーツカー。BMWの美学をもっとも刺激的な形で体現したデザインは、ラグジュアリー・スポーツカーにおけるまったく新しいデザイン言語を確立し、尽きせぬパワーと類稀な俊敏性を表しています。

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