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ドライバー・アシスト・システムの感覚器

ドライバー・アシスト・システムの感覚器

記事を読むのに必要な時間:約5分
現代の自動車が自動車センサーなしで公道に出ることはありません。自動車センサーは、エンジン速度センサーだけでなく、エア・バッグ内や、ホイール上にも取り付けられています。センサー技術は車両周囲の環境を検知し、自動走行と自動駐車機能においても重要な役割を果たします。レーダー、超音波、カメラ、そしてライダーといった、現代の自動車の感覚器について知っておくべきことを紹介します。

2021/10/26

自動車センサー
1. 超音波センサー / 2. カメラ / 3. レーダー
各種カー・センサーにはぞれぞれ長所があります。各センサーが連動することで完璧に補完しあうのです
フィリックス・モーズ
フィリックス・モーズ

BMWグループの自動運転センサー・セットアップ開発エンジニア

あなたの愛車には数多くの自動車センサーが搭載されていますが、それらはできるだけ目につかないところに配置されています。カー・センサーは気づかれないように働き、運転をより快適に、より効率的に、そしてより安全なものにしてくれます(➜ もっと読む:スリップ時の危険を回避するための6つの対処法)。BMWの専門家フィリックス・モーズの協力のもと、カー・センサーが自動運転と駐車機能で果たす役割(➜ もっと読む:ドライビング・アシスト・システムの主な概要)や、自動運転車の未来について解説します。

センサーがなければ、自動車もない

車両にはアシスト・システムのための複雑な技術が搭載されています。そのひとつが、車両のあらゆる場所に設置され、さまざまな機能を持つ、多種多様なセンサー技術です。レイン・センサーやライト・センサー、類似の快適、安全機能に加えて、BMW R&D(研究開発)および、他社自動車メーカーとそのパートナーのR&Dチームが協働で、高度な自動運転という一つの目標に向けて取り組んでいます(➜ もっと読む:時は金なり:タイム・マネジメントに役立つ自動運転車

自動車センサー

どのようなカー・センサーが搭載されているのか?

アシスト・システムでは、センサー技術が自動車の周囲で起きていることを測定・評価し、あらゆる変化を検知します。センサーはすでに緊急ブレーキ・アシスト、夜間視覚補助、交通標識認識、そしてアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)やダイナミック・スタビリティ・コントロール(DSC)に採用されています。さらに、BMWの特定のモデルには、ブレーキ付クルーズ・コントロール、リア・ドライブ・アシスト、アテンション・アシスト、あるいは稼働中のナビゲーションを通じて、必要な車線変更を自動検知するシステムが搭載されています。BMWの専門家フィリックス・モーズの協力のもと、超音波、カメラ、自動車レーダー および ライダー (3Dレーザー・スキャナーとしても知られています)の4種類の自動車センサーとそれぞれの機能を詳しく紹介します。それぞれのセンサーが連携して初めて、その強みが発揮されるのです。

超音波:頑強で高精度

まずは超音波について紹介します。工学技術のひとつである超音波は主に駐車機能、特にリバース・アシスト、駐車距離コントロール、自動駐車機能に使用されます。モーズによると、超音波技術は「短い距離を非常に高精度に測定する」ことを可能にします。超音波に仕組みは、音波を送り、それが物体から反射されるまでの時間を測定するというものです。こうした頑強なセンサー技術は、霧や暗闇でも問題なく機能しますが、周囲最大30フィート(10メートル)程度の短い距離に限定されます。

カメラ:解像度が高く、物事の分類に優れている

車両には実にさまざまなカメラが使用されています。これまでのところ一番よく知られているのは、リア・ビュー・カメラなど駐車をサポートするために使用されているカメラです。大きい開口角で作動するカメラで、できる限り広い範囲を撮影できるという長所があります(「魚眼」カメラとも呼ばれています)。一方、運転機能に使用されるカメラは、望遠から広角まで焦点距離を変えて作動することができる、極めて重要な存在です。こうしたカメラはフロントガラスの後ろにあります。自動車センサーにはさまざまな種類がありますが、その中でもカメラは、極めて高い解像度で動作し、画像処理により物体を高精度で評価・識別できるという長所があります。認知は人工知能の基本であることから(➜ もっ読む: AIデザイン:人工知能がクリエイティブになる)、モーズは「画像処理システムにさまざまな物体を学習させる必要がある」といいます。

Video description

カメラ・センサーのデータは、他のカー・センサーと異なり、交通標識や信号機の状態などの情報を分類することができます。暗闇や低い位置から射し込む日光、レンズの汚れなどの環境的要因により制限される可能性があるため、こうした場合は使用頻度が下がります。また、受動的な測定原理により、距離と速度は収集した画像データから概算することしかできないため、これについては他のセンサー技術の方が優れています。このように、カメラの応用範囲は幅広く、車線の端を識別して、レーン・ディパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警告システム)や自動車だけでなく歩行者や自転車にも反応する緊急ブレーキ機能といったドライバー・アシスト機能をサポートすることができるのです。

自動車レーダー:雨は物体ではない

レーダー(radar)(radio/電波、detection/探知、and/およびranging/測距の略語)と聞いたときに、航空技術を連想する人は多いでしょう。自動車メーカーがレーダーを使用するようになって20年、この電磁センサー技術も今や、業界に欠かせないものになっています。レーダーは速度と距離の測定に使用されます。それでは、レーダー技術とはどのように働くのでしょうか?モーズは次のように説明します。「電波が放射されて、周囲の物体をスキャンします。その後、物体の反響が解析され、必要に応じて対応します」自動車のレーダー技術は2種類に分けられると、BMW専門家のモーズは説明しています。1つ目は、短距離レーダーです。開口角が大きく、短い距離で作動します(最大でおよそ330フィートまたは100メートル)。こうした短距離レーダー・センサーは、バンパー端のコーナー・レーダーに取付けられています。レーン・ディパーチャー・ウォーニング、レーン・チェンジ・アシスト、交差点アシストで必要とされます。一方、長距離レーダーとフルレンジ・レーダーはもっと長い距離をカバーし(最大でおよそ820フィートまたは250メートル)、緊急ブレーキ機能およびアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)に必要とされる情報を提供します。

自動車レーダー

この技術は実現可能な範囲で極めて精緻な距離測定を行い、「雨や霧などの影響をほとんど受けない」とモーズは説明します。レーダー技術は物体の分類にはあまり適していません。レーダーの設計に応じて、物体の下または上を走行できるかどうかの判断に、さまざまな制限が生じます。例えば、交通渋滞の終わりなのか道路標識のゲートなのか、識別しなければならないという難題に直面することがあります。このような状況下では、緊急ブレーキを起動するかどうかをカメラが判断します。

ライダー:暗闇は問題なし

これまで説明してきた3種類のセンサー技術 は、現在のBMWモデルに搭載されています。ライダーはその次のステップにある技術です。レーダーと同じく、ライダー(lidar)もlight(光)、detection(探知)、and(および)、ranging(範囲設定)の略語です。簡単に言えば、ライダーは周囲に回折光パルスを垂直および水平方向に照射するシステムです。このスキャニングにより、固定物と可動物を考慮に入れた上で距離を測定できるのです。「ライダー・センサーで車両周囲の3Dマップ、いわゆる“ポイント・クラウド”を作成することができます」とモーズは説明します。ライダーの大きな長所は、カメラ・システムのように周辺光に依存せず、また物体を学習する必要がない点です。つまり、ライダーは未知の物体にも安全に反応するのです。ライダー技術は活発な光放射と優れた解像度のため、夜でも正確に物体を分類することができます。こうした自動車センサーはまだ価格が高めですが、導入量が増えれば変わってくるでしょう。ライダー技術は自動運転をレベル2(ドライバーがアシスト・システムを監視する)からレベル3(制御を完全に自動車に委ねられる)に飛躍させるために必要となるでしょう。(➜ もっと読む:自動運転の5つのレベル)。

ライダー

高度な自動運転に必要な条件

これまで見てきたように、各自動車センサーはそれぞれ得意分野があります。それを組み合わせれば、どのような環境下であっても、車両周辺の全体図を完璧に描きあげることができるのです。さらに、各システムの機能が重なり合うことで信頼性と可用性が保証されます。ネットワーク構築(➜ もっと読む:コネクテッド・カー※リンク先は英語サイトです)と、デジタル化(➜ もっと読む:スマート・シティ※リンク先は英語サイトです)が進んだ結果、センサー・データの重要性はますます高まっていくでしょう。つまり、自動車センサーは、高度な自動運転の発展と完全な自動走行車の完成に欠かせない要素なのです(➜ もっと読む:自動運転技術への挑戦)。こうした技術のすべてが、「未来の自動車は、人々を目的地まで安全に運ぶものでなければならない」という一つの目標を陰で支えているのです(➜ もっと読む:未来の自動車リンク先は英語サイトです) 。

写真:BMW;筆者:ニルス・アーノルド; イラスト:マディータ・オサリバン;動画:BMW

 

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