0-100km/h。息を呑む加速のすべてを。

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この記事を読んだ後、あなたはクルマの加速におけるエキスパートとなるでしょう。ここでは、その歴史、限界、仕組み、より速く加速するための方法、あるいは電気自動車の優位点など「加速」に関する様々な知識を得ることができます。

2020/4/2

総排気量 3,246cc 直列6気筒 最高出力 252kW〔343ps〕 最高速度 250km/h 0-100km/h加速 5.1秒 車両重量 1,570kg

最大馬力、最大回転数、最高速度。もうひとつ、自動車の性能を測定する上で重要な基準は何でしょうか。もうお分かりですね。そうです、「加速性能」です。この話題だけで、クルマ好きの人々は何時間でも語ることができるでしょう。そして子供達も、Top Trump Cars(ヨーロッパの子供達の間で知られるカード・ゲーム)などを通じて、その数値を学ぶことができます。「0-100km/h加速が3.9秒?ボクの勝ち!」

「加速」小史

世界で初めて時速100kmを達成した自動車「La Jamis Contente」。

自動車における加速の歴史は、そのスタート・ラインにたどり着くまで非常に長い時間を要しました。なぜなら初期のほぼすべての自動車は、時速100kmに到達できるほどの性能を備えていなかったからです。その「時速100kmの壁」を史上初めて打ち破ったのは「La Jamis Contente(ラ・ジャミ・コントン[YS1] :「決して満足しない」の意)」と名付けられたフランスの自動車で、1899年のことでした。このマシンはまるで4つの車輪を付けたロケットのような姿をしており、2つの電気モーターによって34馬力を発生しました。残念ながらこのマシンが0km/hから100km/hまで加速するのに要したタイムは記録されていません。ひとつ確かなことは、ドライバーのカミーユ・ジェナッツィ[YS2] は目標速度に達する前、すでにテスト・コースで十分な距離を走り込んでいたということです。驚くべきことに、当時において電気モーターは内燃機関とほぼ同等の性能を有していたのです。しかしセルモーターが発明され、ガソリン・スタンドがインフラとして広く普及していったのに比べ、電気モーターの普及は著しく遅れてしまいました。

0-100km/h加速:最初はゆるやかに。そして次第に激しく。

それから半世紀。自動車の加速性能は大幅な進歩を遂げましたが、それでも現代の自動車に比べれば、まだまだ「速い」とは言えないレベルのものでした。1950年代のヨーロッパにおいて、自動車が0km/hから100km/h[YS1] まで加速するのには、小型車で30秒を要しました。スポーツカーでさえ、10秒を切るために試行錯誤を重ねなければいけないような状態だったのです。しかし、その後自動車は「加速」の領域において飛躍的な進化を遂げて行きます。30年前にBMWが発売した第1世代[YS2] のM3は、最高出力200psを誇り、0-100km加速6.7秒をマークしています。また、2014年に登場した最高出力431psのM4 クーペでは、この記録を2秒以上も上回っています。

現代において、加速性能が十分でないことを「エンジン・パワーの不足」のせいにすることはもはやできません。では、0-100km/h加速の記録を打ち破るために必要なものとはいったい何でしょうか。答えは、このビデオのなかにあります。

加速性能を最大化する高度なテクノロジー

加速性能をさらに高めるにあたっては、理論と実践の両方が大切です。特にマニュアル・トランスミッション搭載車においては、ドライバーの技量が大きな役割を果たします。すなわち、クラッチとギヤ・シフトのタイミングだけでなく、パワーのロスをできる限り少なくするために、シフト・チェンジに最適なエンジン回転数をも判断しなければなりません。一方、オートマチック・トランスミッションやダブル・クラッチ・トランスミッション搭載車には、ドライバーをアシストするための高度なソフトウェアが組み込まれています。ベテラン・ドライバーが行う作業の一切をほぼ完璧な形で成し遂げるローンチ・コントロールにより、アクセル・ペダルが踏み込まれると最適なエンジン回転数においてシフト・チェンジが自動的に行われ、それぞれのタイヤがパーフェクトにグリップするように電子制御ユニットをコントロールします。言い換えるならば、車載コンピュータは加速し始めの状態を即座に分析し、タイヤのグリップとスリップの適切な組み合わせを弾き出し、そのとおりにクルマを加速させるのです。

技術の進歩により、コンピュータによる制御の精度は人によるマニュアル操作のそれを追い越しました。かつてのプロ・ドライバーはシフト・レバーを巧みに操り、オートマチック・トランスミッションよりもはるかに速く0km/hから100km/hまで加速して見せましたが、ローンチ・コントロールの登場以降、その優位性は逆転しました。しかし、依然としてマニュアル・トランスミッションの「自分でシフト・チェンジする愉しさ」がかけがえのないものであることにも変わりはありません。

加速に「限界」は、あるのだろうか。

0-100km/h加速の記録は更新され続けている。

電気モーターがもたらす、さらなる加速。

あらゆる世界記録と同様に、自動車の加速性能を測定する際にも、それがどのような基準で測定されるのかが重要です。公道での走行が許可されるクルマの場合、0-100km/h加速における記録は現在3秒を切っています。さらに強大なトラクションを誇るラリークロス・マシンでは、非常に短いギア比により2秒の壁すら打ち破ります。そして今、自動車業界における電動化という新たな潮流は、0-100km/h加速にもさらなる記録を期待させるものとなっています。

それは電気自動車が、加速のために一定数の回転を要するエンジンとは異なり、アクセル・ペダルを踏んだその瞬間から最大トルクを発揮できるからです。また、一般的にはトランスミッションも必要としないため、シフト・チェンジの必要もありません。これにより、わずかなパワー・ロスを防ぎ、パフォーマンスをよりパーフェクトに引き出すことができます。電気モーターのパワーやタイヤのグリップなど、他の性能との組み合わせを考えたとき、電動スポーツカーが0-100km/h加速:2秒のハードルを超えるまで、そう時間はかからないでしょう。

記録測定のルール

もちろん、新記録の可能性があるタイムについては、然るべき条件に基づいて測定が行われ、その記録をデータ化する必要があります。そのため、クルマ雑誌などのメディアが測定する場合は、最適化されたGPSなどのデバイスを用いて行われます。測定は平坦な直線コースにおいて複数回繰り返されるとともに、風などの外的要因の影響も考え、逆方向からも繰り返し測定されることが理想的です。ほとんどの国では0km/hから100km/hに至るタイムを測定することが一般的ですが、アメリカとイギリスにおいては0mphから60mph(約97km/h)に至るタイムが基準とされます。いずれにせよ当分の間は、この記録について「3秒」というタイムがひとつの基準、および目標となるでしょう。

0-100km/hを最速で駆けぬける

マニュアル・トランスミッションのBMW M4 クーペ(2014)で、最高の加速を手に入れる方法。
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エンジンをスタートさせる前に、DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)をオフにする必要があります。オフにしない場合、タイヤがわずかにスリップしただけでもシステムがエンジン・パワーを抑制してしまうため、トラクションが損なわれてしまいます。

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BMW M4 クーペを停止させたまま、エンジンをウォームアップしてください。クラッチ・ペダルを踏み込んだままアクセル・ペダルを踏むことで、エンジンをスタートに最適な回転数に調整します。路面とタイヤのグリップが高ければ高いほど、より高い回転数でスタートすることができます。マニュアル・トランスミッションのBMW M4 クーペの場合、3,200-4,000rpmの間が最適値です。

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次に、タイヤのトラクション・ポイントを決めます。これは5-30%程度のスリップが理想的です。スリップが多すぎる場合は、タイヤが空転するのですぐにわかるでしょう。しかし少なすぎる場合は、発進が極端に遅くなってしまいます。ドライバーはこれらのコントロールをシステムに頼らず、すべて手動で行わなければなりません。

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最後のポイントは、ギヤ・シフトです。最も重要なのはシフト・アップのタイミングです。フルスロットルで加速する場合、そのタイミングは完璧なものでなければなりません。それは回転数がおよそ7,100rpmに達したときです。タイミングが早すぎるとエンジンの回転数は必要以上に下がってしまい、パワーをロスしてしまいます。逆に遅すぎる場合は必要以上に回転数が上がり、最大出力を発生するポイントを容易に超えてしまうのです。

「最高の加速」のための練習

たとえプロ・ドライバーであっても、1回や2回の試みで「最高の加速性能」を引き出すことはできません。スタートに最適なエンジン回転数、タイヤのトラクション・ポイント、適切なシフト・タイミングが完璧に組み合わさるまで、幾度もトライを重ねます。そうしてはじめて「最高の加速」を達成できるのです。そのためにはエンジンのウォームアップやエア・コンディショナーなどのコンポーネントをすべてオフにする必要があります。また、気温や路面温度、路面のグリップのほか、アスファルトが濡れているか乾いているかといった、クルマ以外の条件にも大きく左右されることも留意しておく必要があります。

タイヤの異常な摩耗やマシンへの過剰な負荷を伴う極端な走行は、車体に大きな負担となることを留意してください。

最も大事なことは、このような練習を公道では絶対に行わないことです。必ずサーキットのような、閉鎖された適切な場所で練習してください。

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