ヴィンテージ・カー愛好家のトレジャー・ハント

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BMW 2002は世界で最も人気の高いヴィンテージ・カーのひとつで、いわゆるコレクターズ・アイテムとなっています。そのコレクターのひとりが、セバスチャン・フレンケル氏です。フレンケル氏がBMW 2002オートマチックをレバノンの首都・ベイルートで発見するまでの宝探しの冒険をご紹介します。

2021/12/2

リムジンの衣をまとったスポーツ・カー。1960~1970年代にBMW 02シリーズが人気を誇った理由はそこにあります。現在でも、BMW 02シリーズは長い歴史を持つBMWクラシック・カーとして、セバスチャン・フレンケル氏を含む数多くのヴィンテージ・カー愛好家の心をつかんでいます。

「Oh Two(オー・ツー)」コミュニティという、世界規模のネットワークがあります。このネットワークを通じて、セバスチャン・フレンケル氏はベイルートのディーラーが掲載したゴールドのBMW 2002オートマチックの広告をFacebookグループで発見し、このクルマを購入しました。「あの写真に衝撃を受け、頭から離れなくなってしまったんです」と、ドイツのポツダム出身であるフレンケル氏は振り返ります。

美しく保たれた外観:ベイルートのディーラーがインターネットに掲載したゴールドのBMW 2002 オートマチックの広告。
レバノンのナンバー・プレートがまだ残っているこの「BMW 2002オートマチック」は高い人気を誇るレアなヴィンテージ・カー。

セバスチャン・フレンケル氏はBMW 02シリーズと長い縁で結ばれています。「私は1972年生まれです。父がミュンヘン五輪で金メダルを取ったのもこの年でした」。父のペーター・フレンケル氏は、旧東ドイツの20キロ競歩の代表選手でした。そして、ミュンヘンで行われた競歩競技で先導役をつとめたのが、電気エンジンを搭載したオレンジ色のBMW 1602だったのです。「それに気づいたのはあとになってからです。けれども、BMW 02をこよなく愛している私にはぴたりとフィットしたのです」と彼は語ります。

BMW 02シリーズ

BMW 02シリーズとしても知られる114シリーズは、1966年から1977年に製造された、BMW ニュークラス 1600からの派生モデルです。スポーティーな中型車で、4気筒エンジン(M10型)搭載の2ドア・タイプ。このため、1971年以降は02で終わるモデル名がBMW 1502、BMW 1602、BMW 1802およびBMW 2002のように付けられています。

数字の前半2桁はM10エンジンの排気量を示していますが、「エコノミー・モデル」であるBMW 1502は例外で、BMW 1602からスリムダウンされた1.6リットル・エンジンで発売されました。そして、排気量2リットルで100 ps(BMW 2002)~170 ps(BMW 2002ターボ)の2002シリーズが1968年初頭にシリーズ生産され、人気を博しました。

「Oh Two(オー・ツー)」シリーズは、1975年までに最初のBMW 3シリーズ・モデルに取って代わられました。現在、BMW 02シリーズはおもにBMW 2シリーズ クーペに継承されています。

ポツダム生まれのフレンケル氏は、ドイツが統一された後にベルリンの広告代理店に就職しました。「当時はトラバントに乗っていました」とフレンケル氏。「同僚がBMW 02 ツーリングに乗っていたのですが、それこそが私にとって本物のクルマだと感じました」。そしてその同僚から、修復されたBMW 02シリーズを所蔵しているブラウンシュヴァイクにあるガレージを紹介されました。「1990年にそこでミント・グリーンのBMW 1502、75 psを2000ドイツマルクで購入し、友人と一緒にいくらか手を加えました」と彼は当時を思い返します。

BMW 2002オートマチックは、大量の書類と一緒にハンブルク港に到着しました。

「当時、BMW 02シリーズはポピュラーではなかったので、とても安かったです」とのこと。現在、保管状態のよいBMW 02シリーズは10~20倍の値段に跳ね上がっています。「最初からBMW 1502がとても気に入っていました」と、フレンケル氏が続けます。

そして、彼はすぐに別のBMW 02シリーズを入手しました。1995年にみずから広告代理店を立ち上げたとき、フレンケル氏はアトランティック・ブルー・モデルに、パートナーはゴルフ・イエローに乗っていました。「2001年に廃車になるまで、ほぼ毎日乗っていた」と言います。それから数年は、02と名のつくBMW車は彼の手元にありませんでした。「ところが、ある時点で02こそが自分のためのクルマだということに気づきました。デザインが素晴らしい。幅の狭いキドニー・グリルに、サーキュラー・リヤ・ライト…。まるでテイラーメイドで仕立てられたスーツのように、私にぴったりなんです」と彼は語ります。

BMW 02シリーズはスポーティーかつ、コンパクトで俊敏です。ダイナミックですが、とても優しい性質で管理しやすい。そして、ドリフトしやすいんです、特にターボの場合は!
セバスチャン・フレンケル氏
セバスチャン・フレンケル氏は、入手したBMW 2002オートマチックをポツダムへ移送しました。そこで、自動車整備工の友人にディティールを仕上げてもらおうとしています。

そして、フレンケル氏にとってテイラーメイドのスーツのようなクルマが、レバノンのベイルートで見つかりました。このクルマをFacebookで見つけてまもなく、フレンケル氏の友人がビジネスのためレバノンへ赴く機会がありました。「そのときに、現物を見てきてもらいました」と彼は言います。友人はBMW 2002オートマチックのコンディションが良好であると判断しました。年配の紳士が20年以上、乗っていたのだそうです。それをディーラーが購入し、修復してから、Facebookに広告を掲載したのです。

「コンディションが良いとわかり、私もベイルートへ向かいました」と、フレンケル氏が続けます。「3日間滞在して、素晴らしい食事を堪能し、魅力的な都市を散策して、適正な値段で02を購入しました」そして、このゴールドの自動車を貨物船でドイツへ送りました。「ハンブルクへ送るのは手続きが煩雑で、コストがかさみましたね」と彼は語ります。一方、関税を支払わずに済んだのは、ドイツではHプレート付のドイツ製ヴィンテージ・カーが保護すべき文化遺産に分類されているためです。

中東からやって来たヴィンテージ・カーはドイツ東部でも美しく保たれています。

フレンケル氏が手に入れたBMW 2002オートマチックは、いくつかのディティールを仕上げる必要がありましたが「それだけの価値があります」と、彼はうれしそうに話します。特に重要なのは、すべてにおいてオリジナルの良好な状態を維持することです。「工場から出荷されたばかりの状態のようでなければだめ、というわけではありませんが、スペア部品は車体と同時代のものでないといけません」。

中東からやって来た黄金の宝は、フレンケル氏がレーストラックでも走らせていた、レッドとイエローのBMW 2002と入れ替わりました。この新しいBMW 2002は日常的に使うクルマにする予定だそうです。

現在、フレンケル氏はいくつかのディティールの仕上げに時間をかけています。「今はこのクルマと一緒に過ごすことがとても楽しいです。クルマの前に立ってすぐに、改めてこう思いました。BMW 02と私は同じ時を過ごす者同士なのだと」。

王冠の継承者。

BMW 2シリーズ クーペ

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