プロ・ドライバーが教える12のヒント:コーナーにおけるレコード・ラインの探し方

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レコード・ラインは、サーキットにおいてすべてのレーシング・ドライバーが探し求めるものです。しかし、その探し方を誰もが知っているわけではありません。レコード・ラインの探し方、そしてレーシング・スキルを新たなレベルへと引き上げるために必要な12のヒントを、BMWのエキスパートが明かしてくれます。

2021/3/16

ゴーカートのコースで、競争相手があなたをいとも簡単に追い抜いていくように感じたことはないでしょうか。その場合、マシンの性能が理由となることはほとんどありません。可能性として高いのは、相手の方がレコード・ラインを取る能力に長けているということです。プロのレースでさえも、このレコード・ラインが勝敗の鍵となります。ゆえにドライバーとチームは、できるだけ速く周回できるよう、サーキットごとに最適なライン取りを徹底的に分析するのです。

クラウディア・ヒュルトゲンは、ドイツにおける最高のレーシング・ドライバーの一人です。彼女は、世界で最も過酷なサーキットとして知られるニュルブルクリンク北コース(ノルドシュライフェ)で開催されたドイツ・ツーリング・カー・チャレンジやドイツ・プロダクションカー選手権、ドイツ耐久選手権において、BMWを駆って勝利を挙げました。また、ドバイ24時間やデイトナ24時間などの耐久レースでも優勝しています(➜ ル・マン:スリルに満ちた 24時間※リンク先は英語です。)。2012年以降、ヒュルトゲンはBMW Driving Experienceのチーフ・インストラクターとして活躍しています。

ヒュルトゲンによれば、レコード・ラインの探求は決して終わることのない作業です。「レコード・ラインは、変化する状況に合わせて常に調整し直さなければなりません」と、この経験豊かなレーシング・ドライバーは説明します。各々のドライビング・スタイル(アグレッシブかディフェンシブか)、路面の状況(滑りにくいか滑りやすいか)、当日の気候(ドライかウェットか)など、数多くの要因がレコード・ラインに影響します。

レコード・ラインを探す秘訣。それは、ただ練習あるのみです
クラウディア・ヒュルトゲン

BMW Driving Experience チーフ・インストラクター

© Lucas Pripfl
クラウディア・ヒュルトゲン:BMW Driving Experience チーフ・インストラクター

プロから学ぶサーキット・ドライブのヒント

BMW M Race Track Experience(ドイツ)では、15以上のインターナショナル・サーキットを高速で、かつ安全に運転する方法を学ぶことができます。インストラクターは特に、各コースのレコード・ラインについて念入りに講義を行います。

※日本でも2020年10月31日(土)、栃木県のテストコースにてBMW M Performanceモデルのドライビング講習会が開催されました。

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© BMW AG
BMW M Race Track Experienceでエイペックス・コーナーの攻略を学ぶ

レコード・ラインを探すために ― クラウディア・ヒュルトゲンが教える12のヒント

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コースを余すところなく使いましょう。道幅はそのためにあるのです。

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どのラインを走行するかは、あなたの視線によって決まります。人は無意識に、視線と同じ方向へクルマを走らせます。

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レコード・ラインや適正なコーナリング・スピードを見極められるようになるまでは、ラインを探りながら根気よく周回を重ねましょう。ただし、スピードを上げるのは安全だと確信できる時だけにしましょう。

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サーキット・ドライブのヒント:コーナー攻略の重要なポイント

1 ブレーキング・ポイント:ターニング・ポイントへ到達するまでに、ここからブレーキを踏み減速します。

2 ターニング・ポイント:ここでブレーキを離し、ステアリングをイン側へと切り、エイペックス・ポイントを目指します。

3 エイペックス・ポイント(またはクリッピング・ポイント)切っているステアリングをここで戻しはじめます。

4 エグジット・ポイント:ステアリングを真っ直ぐに戻し、アクセルを踏み加速します。

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自分のペースでコースを記憶しましょう。特に基準となるポイントおよびブレーキング・ポイントが重要です。それぞれのコーナーにおけるターニング・ポイント、エイペックス・ポイント、エグジット・ポイントを決めます。

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原則として、コーナーにはアウト側から進入します。エイペックス・ポイントはイン側の基準となるポイントです。エイペックス・ポイントを過ぎたら、コーナーの出口に視線を向けます。そのままマシンの挙動に身を任せ、ステアリングを戻しながらコーナー出口で再び加速します。

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どんな小さな修正であろうとも、ステアリングの切れ角を修正する場合はマシンの挙動を妨げることになり、タイムをロスしてしまいます。

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アクセルをむやみに踏んではいけません。コーナー出口に向かって、加速するべき正しい瞬間まで待つのです。ほとんどの場合、ステアリングを戻すのと同時に加速をはじめて構いません。

レコード・ラインとは?

レコード・ラインとは、サーキットを最も速く駆けぬけるための理想的な走行ラインのことです。このラインはマシンやドライビング・スタイル、コースの高低差、当日の気候など、多くの要因に左右されます。そしてレコード・ラインは、必ずしもコースの最短距離を通るとは限りません。多くの場合、コーナーには複数のルートが存在します。

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シケインやS字コーナー、ヘアピン・コーナーについて知りましょう。
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もっとも典型的なのが直角コーナーです。多少の違いはあるにせよ、ほぼすべてのサーキットに設定されています。他の多くのタイプのコーナーよりも、ハイスピードでのコーナリングが可能です。
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多くのドライバーに好まれるS字コーナーは、美しいライン取りで滑らかに駆けぬけることができます。
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タイトなカーブを描くヘアピン・コーナーは、一般的にサーキットで最も低速となるポイントです。
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特徴的なダブル・エイペックス・コーナーは、ドライバーにとって特に攻略が難しくチャレンジングなコーナーです。
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シケインが設けられる唯一の目的は、マシンを減速させることです。それゆえに他のコーナーに比べて、ドライバーはこのコーナーでリズムを狂わされると感じるようです。
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すべてのコーナーには、それぞれ異なるレコード・ラインがあります。まずはそのラインを探し出しましょう。次のステップはコーナーごとのラインをまとめ、ひとつの完成されたレコード・ラインを作り上げることです。こうしなければならないのは、各コーナーのレコード・ラインが、その前後のセクションに大きく左右されるからです。

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最短距離が必ずしも最速のルートであるとは限りません。大回りであっても、次のセクションに向けてマシンのポジションがより良くなるようなラインであれば、ラップタイムを短縮するのに役立ちます。これが特に重要になるのは、異なる性格のコーナーが連続する複合コーナーの場合です。

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複合コーナーのレコード・ライン

ここで目指すのは、2つ目のコーナーから可能な限り速い速度で脱出することです。つまり、2つ目のコーナー出口で出来るだけ早くアクセルを踏めるようにするには、いったいどのようなラインで走行しなければならないかを考えるのです。つまり、複合コーナーのライン取りを考える場合は、逆向きから考えることになります。

1 レコード・ライン上をコーナーAに進みます。エイペックス・ポイントは通常と同じままです。

2コーナーAを出る際にアウト側へふくらまないようにし、真っ直ぐに走行するようにします。

3 このようにすれば、コーナーBに進入する際に良いポジションを得ることができます。

まとめ:コーナーAの完璧なレコード・ラインを犠牲にして、完璧な角度でコーナーBに入り、可能な限り速い速度で脱出します。

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レコード・ラインと最適なコーナリング・スピードを判断するには、路面の凹凸や縁石の高さ、アスファルトの状態を考慮しましょう。

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路面がウェットの場合には、より大きな弧を描いて走行しましょう。ほとんどのコーナーはイン側に向けて傾斜しています。つまり、コーナーの内側に雨水が集まることになります。さらに、タイヤの摩耗も大きくなります。この2つの要素が、コースをさらに滑りやすいものとするのです。

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ここまでの知識を身に付けたら、必要なことはあと一つです。それは、ただひたすら練習をすること。何周も何周も走り続け、完璧なレコード・ラインを探しましょう!

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レコード・ラインのバリエーション

時には、レコード・ラインから逸脱することに意味がある場合もあります。例えば、アタック・ラインを増やして時間稼ぎをしたい場合などです。

1 この場合、ブレーキング・ポイントは通常より遅らせた位置に設定します。

2ステアリング操作のタイミングも遅らせます。そして最も重要なことは、よりハードにコントロールを行うことです。

3 このようなラインを取る場合は、早い段階でステアリングを戻すポイントへとマシンを誘導し、より素早く加速をはじめることが重要です。

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モンツァからスパまで ― モータースポーツ界の名物コーナー ギャラリーでレコード・ラインを探し、どう攻略するかを想像してみてください。
© Spa-Francorchamps
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ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットにあるオー・ルージュ。このコーナーは、F1グランプリが開催されるすべてのコースのなかで、最もチャレンジングなコーナーの一つとみなされています。ドライバーはストレートから、若干下り坂となる左コーナーに入ります。その後すぐにコースは反転し、急激な登り坂と複合した右コーナーが続きます。この伝説的なコーナーでは、ドライバーは強烈なダウンフォースと横Gにさらされますが、F1マシンはこのコーナーをレコード・ラインに沿ってフル・スロットルで、つまり最高で300 km/h近くの速度で駆け上がります。
© Mark Vaughn / Autoweek
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カリフォルニア州モントレーの近郊にあるラグナ・セカ・レースウェイ。ここにある有名なコークスクリューは、プロのレーシング・ドライバーでさえレコード・ラインを見つけることが難しい複合コーナーです。左から右へと切り替わるコーナーは、まるでワインオープナーのように曲りくねった下り坂になっています。コーナーの入口は少し上り坂になっているため、ドライバーは道の先がまったく見えない状態で、ブレーキをかけながら左コーナーへと進入しなければなりません。その後、うねる路面を切り返しながら右に再び90度曲がります。まるでジェット・コースターに乗っているような、手ごたえのあるコーナーです。
© Robert Kah
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ドイツのアイフェル山地にあるニュルブルクリンク。その北コース(ノルドシュライフェ)には73ものコーナーがあります。それらには「ベルクヴェルク(鉱山)」「シュヴァルベンシュヴァンツ(ツバメの尾)」「ブリュンヒェン(小さな井戸)」といったドイツ語の愉快な名前が付けられていますが、ドライバーたちにとってはその名前とは裏腹に「悪名高き」と言ったほうがいいかもしれません。往年のF1ワールド・チャンピオンであるジャッキー・スチュワートが名付けた「グリーン・ヘル(緑の地獄)」という愛称が、このコースの過酷さを端的に表しています。なかでもクイーンとして君臨する伝説的なコーナーが、「カルーセル」です。この狭い左ヘアピンは内側がバンクになっており、さらに傾斜部分はアスファルトではなく、コンクリートの板で覆われています。マシンによってその速度は異なりますが、80 km/h程度にまで減速しながらレコード・ラインを外さぬよう、ドライバーたちはバンクを走行します。そうしてマシンのバランスをコントロールしながらも、彼らはホーエ・アハトと呼ばれるタイトな右コーナーに向けてできる限りの加速を得ようと、この短いラフ・コーナーの攻略に挑むのです。
© Paul Gilham / Staff / Getty Images
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次に注目すべきコーナーについて、重要なことはただ一つ。その位置です。モナコ公国の市街地コースに設けられるピシーヌ(プール)という名のコーナーは港のすぐそばにあり、コーナー脇にプールがあることからその名が付けられました。このコーナーの魅力は、モナコ市街地コースのすべてのコーナーと同様に、ランオフ・エリアがないことにより引き出されています。ドライバーにとっては極めて難しいコーナーであり、大抵の場合、ここでのミスはレースからのリタイアを意味します。モナコでは、レコード・ラインをキープできなければ大きな代償を払うことになるのです。
© Monza Eni Circuit
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イタリアにあるオールド・コース、モンツァ・サーキットは、現代のF1カレンダーに残る数少ない高速サーキットの一つです。アクセル全開率は実に80%以上に達します。しかし、このようなコースにもコーナーはもちろん存在します。ここで登場するパラボリカは、長い2つのストレートをつなぐ180度のコーナーです。ドライバーはフル・スロットルでこの大きなカーブに進入し、コーナリング・スピードをある程度保ちながら曲がり、コーナー出口で再びフル・スロットルで加速してゆきます。

これらのヒントは、クローズド・サーキットでの走行でのみ実践し、さらに初心者は専門家の指導のもとでのみ行ってください。公道でのドライブでは行わないでください。

イラスト/アニメーション:シプリアン・ロスリンガー