BMWのネーミングを読み解く方法

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BMWは、長年の伝統のなかで、確固たるネーミングルールを遵守してきました。英数字の由来、組み合わせの意味、そして新しいモデル名決定にまつわる努力についてご紹介します。

2021/10/19

BMWに「戦略的命名と車両識別」のための部署がある事実は、会社としていかにモデル名を重視しているかを物語っています。そして、そのモデル名は、短いブレインストーミングで決められているように見えて、実は正反対。新しいモデル名は、世界中のお客様が理解できるよう、大規模なプロセスを経て決定されています。また、将来の戦略的展開も考慮した上で、生み出されるものなのです。

モデル名を簡単に解読する方法

BMW 745eを例に、BMWのモデル名を読み解くポイントをお伝えします。「3桁の数字のうち、最初の数字はセグメントまたはモデル・シリーズを示します」と専門家のペトラ・マーズは解説します。この数字は車両のサイズ区分を表しており、数字が大きくなるにつれて、サイズも大きくなります。偶数は基本的に、クーペのような特にスポーティなモデルを示します。お客様とのコミュニケーションの場では、分かりやすいようにセダンやカブリオレといった呼称も付け加えられます。

車両を見れば車種は一目瞭然なので、そういった呼称は基本的に車両本体には表示されていません。ただし、SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)、SAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)およびロードスターは例外です。BMW コンセプト・カーの名前には、「X」や「Z」が付けられ、車両本体にも記されています。例えば、BMW 745e セダンは、BMWがフラッグシップ・モデルとして誇る最上位クラスのセダンです。

CO2 emissions 49 - 41 g/km (combined)
Fuel consumption 2,1 - 1,8 l/100 km (combined)
Power consumption 18,9 - 17,9 kWh/100 km (combined)

BMWのモデルと「バーチャル排気量」

次の2桁の数字、つまり745eの「45」は、かつてはエンジンの排気量を示していました(例:3.0リットルのエンジン排気量なら「30」)。現在では、エンジンの性能をキロワット(kW)つまり「バーチャル排気量」で表しています。「45」の数字が付く車両の場合は、300~350 kWの性能を備えていることになります。ターボ、ハイブリッド、電気などのエンジンが続々と登場する中、BMWはこのネーミングルールを厳格に守り続けてきました。

モデル名の最後に付く英小文字は、駆動技術を示しています。ガゾリン車(インジェクション車)には「i」、ディーゼル車には「d」が付きます。BMW 745e PHEVのように、「e」が付いたモデルはプラグイン・ハイブリッド車です(➜ 詳しくはこちら:電気自動車とプラグイン・ ハイブリッド・モデルの特徴)。4輪駆動車にはxDriveが付きます。sDriveは前輪駆動または後輪駆動を意味し、XおよびZモデルのみで使用されます。

BMWのネーミングの歴史

BMWのモデル名は、昔から現在のように明快でシンプル、かつ規則的だったわけではありません。それは、BMWの長い歴史を振り返るとよく分かります。BMW最初の車である、1929年製造のライセンス・モデルはBMW 3/15 PSと名付けられました。「PS」はドイツ語の「プフェーアデシュテルケ(馬力)」の略で、15馬力という意味です。「3」は、750立方センチメートルの排気量から算出される課税基準の馬力を示しています。1933年のBMW 303から、第二次世界大戦以前までに製造された全車両には300番台(➜詳しくはこちら:往年のレーシング・マシン:BMWのレジェンド)の数字が付けられています。これは開発番号で、飛行機のエンジンは100番台、バイクのエンジンは200番台です。その後、501、700、3200 CS、ノイエ・クラッセ(新しいクラスという意味)の1500、02シリーズ(➜ 詳しくは:往年のBMW 2002※リンク先は英語サイトです)など、1960年代までにBMWの人気モデルが次々と登場しました。当時のモデル名は、論理的に決定されていたものの、厳格なネーミングルールには従っていませんでした。

1970年代初頭、ノイエ・クラッセの次のモデルが計画されたときに状況が変化しました。BMWの歴史家であるアニカ・ビス博士によると、グループ経営陣は「より直感で理解できるモデル・シリーズの命名方法」の開発を目指したといいます。固有の名称がつけられた車は、BMW イセッタが最後となりました。(➜詳しくはこちら:小さなイセッタの歴史※リンク先は英語サイトです

新たなネーミングルールは、透明性があるだけでなく、ドイツ国外でも分かりやすいものでした。
アニカ・ビス博士

BMW コーポレート・ヒストリー

1972年、BMWのネーミングルールにターニング・ポイントが訪れました。新型BMW 520iを皮切りに、BMWの命名方法に確固たる規則が導入されたのです。このとき確立された規則は、今日に至るまで一貫して守られ続けています。ビス博士によると、BMWの新任幹部の中に、新しいモデルのネーミングルールについて明確なアイデアを持っている者が数名いたといいます。その背景には、「当時BMWの車の名称はあまりにも一貫性に欠けており、1960年代のロジックでは大型のモーターを持った小型モデルを統一感のある魅力的な名前にすることがほぼ不可能だった」という事情がありました。以降、基本的な構造は現在まで変わらず、エレクトロモビリティの時代でも引き継がれています。

新章:エレクトロモビリティとネーミングルールの発展

サブブランドのBMW i(イノベーションのi)では、完全電気駆動モデル(BEV)を展開しています。今ではBMW i3、BMW i8(➜詳しくは:BMW iの10年:ヴィジョンが生んだサクセス・ストーリー )、BMW iX3(➜詳しくは:新たなエネルギー:BMW iX3で巡るラウジッツ湖水地方)に加えて、BMW iXとBMW i4が登場し、充実したラインアップとなりました。シリーズとコンセプトの名称の規則性は、上に挙げたBMWのモデルと何ら変わることはありません。BMW i4は、スポーティで、デザイン性の高い、中型モデルとすぐに判別できます。

基本的にバッテリー駆動車(BEV)では、エンジンの種類を示す英小文字がなくなり、サブブランド名の「i」に置き換えられています。それ以外は、XやZモデルと同様です。ただし、規則には例外がつきものです。BMW iXは、BMW電気自動車のフラッグシップ・モデルのため、名前にシリーズ表記がありません。

BMW Mにも、同じくルールが存在する

1970年代初頭から、サブブランド名のBMW Mを冠した、傑出した性能を持つ特にスポーティなモデルが登場しました。車両本体とお客様とのコミュニケーションの場では、シーハウスの3色のストライプが描かれたMロゴ(➜詳しくは:BMW Mのロゴとカラーの由来)を目にすることができます。M340iのように車両サイズとエンジン性能を表す数字の先頭に「M」が付いているのがMパフォーマンス車です。XおよびZモデルでは、X5 M50iのように、モデル情報の前、車種名の後に「M」が付きます。

BMW M2やBMW X5 MといったBMW Mハイパフォーマンス車の場合も、ネーミングルールが異なります。それらの名称には、性能、駆動技術、駆動バリエーションに関するモデル情報が含まれていません。その理由は、「M」が主要な特徴をすべて示すからです。XおよびZモデルは「M」が車種名の後に付きます。それ以外では、BMW X4 MやBMW M4のように、サブブランドやセグメントに基づいて名前が付けられています。

BMWのネーミング戦略は、将来を見据えたものでなくてはなりません。そのポートフォリオに新しい車を加え、ロジックを損なうことなく発展させていく必要があります。
ダニエラ・ミシターノ

BMWブランドの戦略的ネーミング

BMWのネーミングと目指すべき未来

BMWのモデル名は、お客様にとって明快であることを目指しています。加えて、唯一無二で、理解しやすい名前でなくてはなりません。そして世界中のお客様が、BMWのモデル名の由来をすぐに把握できるようにしなくてはなりません。積み重ねてきた歴史において、ネーミングルールを発展させながら厳格に守ってきたことにより、BMW M3のような名前も車愛好家の方々の意識にしっかりと定着し、ブランドとしての地位を確立することができました。また、すべてのBMWモデルは、BMWというファミリー・ネームが象徴する駆けぬける歓びでつながっているのです。(➜詳しくはこちら:「駆けぬける歓び」:BMWスローガンの歴史

BMWのモデル名のABCと123

BMWがモデル名に使用している、または過去に使用していたその他の文字について以下にご紹介します。

  • Ci(旧) – まだセダンとクーペが偶数と奇数で区別されていなかった時代、例えばBMW 323 Ci (1999/2000)は、BMW 3シリーズのクーペとカブリオレのいずれかを示していました。
  • コンパクト(旧) – BMW 3シリーズの小型の3ドア・ハッチバックの名称です。
  • コンペティション(現行) – BMW Mモデルで、よりスポーティなデザインの車の名前には、「コンペティション」が付いています。
  • CS(現行) – かつてはクーペ・スポーツの略でしたが、BMW Mモデルで特にスポーティな仕様のコンペティション・スポーツを意味するようになりました。
  • CSL(現行) – 略語のCSと同様に、「クーペ・スポーツ・ライヒトバウ(ライトウェイト)」を示し、最適化された軽量技術を意味しています。
  • e(旧) – 1980年代にBMWでは325e/525eが展開されていました。この「e」はギリシャ文字のエータからきており、トルクとRPM(回転数)(➜詳しくはこちら:自動車のトルク※リンク先は英語サイトです)が最適化されたバージョンのことを示していました。現在では、PHEVに使用されています。
  • GT(現行) – グラン ツーリスモの略です。GTはハッチバック・モデルを意味し、BMW 6シリーズ グラン ツーリスモがこれにあたります。
  • L(現行) – ロング・ホイールベースにより、後部座席の乗り心地がより快適な車両には「L」が付いています。
  • ti/tii(現行) – BMW 02からこの文字が追加されました。「ti」はイタリア語のツーリズモ・インテルナツィオナーレ、「tii」はツーリズモ・インテルナツィオナーレ・イニエツィオーネ(ツーリング・インターナショナル・インジェクション)の略です。最新モデルはBMW 128tiです。

BMWのモデル名を読み解く方法

3桁の数字のうち、最初の数字はシリーズを示します(サイズの小さい順から、1、2、3と続きます)。次の2桁の数字は、かつてはエンジン排気量でしたが、現在ではエンジン性能を示しています。そして最後の英字は、「i」はガソリン車(インジェクション車)、「d」はディーゼル車、「x」は4輪駆動車を示します。

写真:BMW; 記事:BMW; アニメーション:ミヒャエル・ブロス