映画「ブラック・ウィドウ」:BMWのスタント・カーが主役級の活躍

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マーベル・スタジオ最新作「ブラック・ウィドウ」では、ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフが素晴らしいドライビング・スキルを披露しています。特にBMW X3やBMW 2シリーズ・グラン・クーペを使ったスタント・シーンは大きな見どころとなっています。では、スタント・シーンはどのようにして撮影されたのでしょうか。また、映画に登場する車は現実に実在するものなのでしょうか。この特別記事で、これらの疑問に対する答えを明かしていきましょう。

2021/7/1

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映画「ブラック・ウィドウ」スタント・シーンの撮影秘話:メイキングのなかのBMW X3とBMW 2シリーズ・グラン・クーペをご覧ください。

鳴り響くスキール音、ドリフト走行、フルスピードでの180度ターン―ブダペストの中心地で繰り広げられる、迫力満点のハイスピードなカー・チェイス。武装車やバイクライダーの追手との追走劇。スカーレット・ヨハンソン扮するブラック・ウィドウが操るのは、そう、BMW X3です。突然の爆発!衝撃によって吹き飛ばされ、バレエ・ダンサーのようにくるくると宙を舞うBMW X3。「カット!カット!」という声が響きます。スタント・チームを率いる第2班監督、ダリン・プレスコットは、映画「ブラック・ウィドウ」の大きな見どころである壮大なドライビング・シーンを撮り終え、満足そうに微笑みます。しかしもう、次のスタント・シーンの撮影が後に控えています…。

どのスタント・カーも、一台一台が個別に準備されたもの

「基本的には、どんな車でもスタント・カーに変える事は可能です。」と第2班監督、ダリン・プレスコットはそう語ります。「限られた時間のなかで、創造性が求められます。重要なのは、台本の指示を実現することです。必要があれば、ESPや安全補助機能等を解除したり、エンジンを交換したり、車体をすべてひっぺがして、一から作り直したりもします。」

「先ほどのBMW 2シリーズ・グラン・クーペに加え、量産車として使用されたものも含め、13台ものBMW X3をこの映画のために準備しました。」第2班監督であるプレスコットはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のヒーロー映画最新作でのドライビング・シーンの苦労話を交えて解説します。劇中ではたった数秒間のシーンのために、何時間もの準備が必要となります。時には数日かけて計画することもあるのです。

「あるカー・スタント・シーンのために車をどう改造するかは、そのシーンに何が要求されているかに基づきます。」とプレスコットは言います。メーカーで取り付けられたドライバーのための安全機器をどうするかは、最初に決定しなければならない点です。こうした機能は公道上では不可欠なものですが、スタント・シーンや映画で使用する車には別のことが求められます。「上品にコーナーを曲がる車では、BMW X3がドリフトするシーンと同様のスリルを感じさせてくれません。そのため、スタント・ドライバーがスタント・アクションを行うときに使用できるよう。スタント・カーに改造したハンドブレーキ機構を取り付けて第2のブレーキ機構を作りました。スタント・ドライバーは通常カメラに映ってはいけません。俳優の後ろに座るか、ルーフに取り付けられたケージに入って、そこから車を操縦するのです。撮影した映像にVFX、つまり視覚効果をのせれば、完全な錯覚が作り出されます。

「ただし、安全は最優先事項です。」と、プレスコットは強調します。「シャーシにはロール・ケージを取り付けますし、さらにホイール・アーチの裏にもロール・バーを取り付け、タイヤの破裂を防いでいます。バンパーももちろん、補強されています。映画「ブラック・ウィドウ」の中では、スタント・カーのドライバーがBMW X3の車体横に街灯をかすめながら、フルスロットルで180度ターンするシーンがあります。スタント・チームは乗員を保護するため、車内にバーを取り付けました。

監督、スタント・チーム、そしてVFXチーム。パーフェクトなスタント・シーンを作り出すためにはチームワークが不可欠です。
ダリン・プレスコット

第2班監督

できる限り、ユニークなスタントを

「ブラック・ウィドウ」は、ナターシャ・ロマノフの過去が描かれ、観客を引き込みます。このアクション超大作では、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、そしてマイティ・ソーなどのヒーローたちが集結したチーム、アベンジャーズへの彼女の想いが描かれています。これまでの作品と同様、物語はサスペンス調で、巧妙に作りこまれた一連のアクション・シーンと印象的な特殊効果を用いて、物語が語られていきます。ダリン・プリスコットは、これらの要素はまさにマーベル映画を作り出す材料であり、そのスパイスとなっているのが惜しみなくちりばめられた、優れたスタントであると考えています。チームワークなしに、これだけのことを成し遂げるのは不可能だ、と第2班監督のプレスコットは言います。「監督、スタント・チーム、そして映画の視覚効果を担当するVFXチームが互いに手を取り合い、このようなプロジェクトを実現させています。またマーベルの特殊効果部門は世界最高の技術を誇っています。スタントのアイデアは自然と浮かんでくることも多いのですが、結局、私たちが臨んでいるのは、できる限りオリジナルなものなのです。これまでに見た事のないようなアクション・シーンを作り出したいと思っています。そのため、私たちは常に大きな課題を提示されていることになります。しかし、私たちのスタントのアイデアにぴったり合う舞台を作り上げられるまで、プロットやロケのニュアンスを絶えず微調整しています。」スタント・コーディネーターは私たちのアイデアを形にするのが仕事です。スタント・コーディネーターは実現の可能性を見極め、スタント・カーとロケのセットをどのように調節するかを決定します。その撮影で何ができるか、そして何ができないかを理解するために、彼ほどチームやスタントマンたちのことを知っている人物はいません。

最初の1テイクだけで素晴らしいスタントを撮影することが理想です。
ダリン・プレスコット

第2班監督

「ブラック・ウィドウ」1テイクで撮ったカー・チェイス・シーン

その1シーンがいくつのショットで構成されるかは、スタントの範囲によって決まります。「撮影が開始されるとすぐ、時計の針の音がカチコチと鳴りだすのです。」プレスコットは、彼の前にある綿密に計画された撮影スケジュールを指しながら語ります。すべてのセッティングやカメラ・ポジションが細やかに記載されています。「映画の撮影は非常にタイトで厳しいスケジュールに従って行われます。遅れが生じれば、高くつく可能性があります。撮影日数はあらかじめ定められています。スケジュール通りに進まないことがあった場合、この撮影日数を守るため、どこかで失った分の時間を削ったり、スケジュールを組みなおしたりしなければなりません。」このため、BMW X3を使用したブダペストのカー・チェイス・シーン等の難しいアクション・シーンや、BMW 2シリーズ・グラン・クーペを使用した運転シーンなどは、細部まで計画して準備する必要があります。

「最初の1テイクだけで素晴らしいスタントを撮影することが私たちの理想です。」とプレスコットは語ります。そして、こう続けました。「車が転覆してしまえば、修理して再度撮影を開始するのに半日はかかります。」新しいテイクをとる場合は、1日がかりです。「このことも、カー・スタント・シーンが格闘シーンと異なる点です。格闘シーンではカメラ・アングルが気に入らなかったとしても、すぐに撮りなおすことができます。カー・スタントの場合、撮影したフィルムを見てアングルが正しくなかったと思っても、撮りなおしは容易なことではありません。カー・スタントではリハーサルができません。3テイク撮っても撮影がOKにならなければ、もう一度考え直す必要があります。」

即興の芸術ともいえる、スタント・ドライビング

スタントのドライビング・シーンについて必ず言えることは、同じものは2つとないということです。あらかじめすべてを詳細に計画し、準備することは可能だと、プレスコットは言います。「ただし、私たちの仕事では、常に変化に対応することが求められます。毎日が新しい日なのです。天候の変化、技術的な問題など、私たちは常に改善しています。スタント中は、カメラの前でできる限りのことをするよう努力しますが、常に例外的な状況は発生します。たとえば、複数の車とぶつかりながら車を操縦するシーン。できるだけ多くの車を用意しましたが、台本に書かれているとおりの内容を実現するには時間が足りませんでした。そのためVFXチームが視覚的なインパクトを高めるためにさらに車を追加しました。」

スパイであるロマノフがBMWに乗る利点をどのように利用するか、そしてその強みをどのように表現するのか。スタント・チームはBMWが持つ性能に導かれ、劇中でそのポテンシャルを最大限に活用しました。
ダリン・プレスコット

第2班監督

ブラック・ウィドウが乗るBMW:特殊用途でのX3

他のアベンジャーズのヒーローとは異なり、ブラック・ウィドウには特殊な能力や武器がありません。そのため、台本の意図をくみ取り、車にたくさんの傷をつけなければなりませんでした。「BMW X3とBMW 2シリーズを撮影に使用することがわかってから、私たちはブダペストでのブラック・ウィドウのカー・チェイス・シーンの要素を再設計しました。バイクに追われるシーンで、スカーレット・ヨハンソンがBMWを運転する良さを引き立てるにはどうしたらよいか、車の強みをどのように見せつけるか。スタント・チームはBMWの持つ性能に導かれ、劇中でそのポテンシャルを最大限に活用しました。俳優たちもスタント・チームも、この車両が持つダイナミック性や、特別なトリックをほとんど必要としないことに驚かされました。」

ただし、ベテランの・スタント・コーディネーターは少し残念に思っている事がありました。「シーン中に、BMW X3の側面が街灯にぶつかり、助手席のドアが外れることになっていました。そうなるよう、私たちはあらゆる手を使う必要がありました。なぜなら、X3の車体が頑丈すぎて、ドアを外れさせることが難しかったからです。こんな美しい車をずたずたにするなんて…とても胸が痛みました。ですが、完成した映画を見てみると、どの様なわずかな調整でも、努力して行う価値があったと思っています。

私はドリフト・シーンについては納得がいくシーンが取れるよう、非常に厳しい要求をします。
ダリン・プレスコット

第2班監督

撮影が終了した後、改造された使用済みのスタント・カーはどうなるのでしょうか。「スタント・カーは公道の走行を許可されません。」プレスコットは強調します。「車両はスタジオの所有物として残されるか、メーカーに戻ってリサイクルされます。」ただし、中にはコレクションや展示用に利用される車両もあります。

厳しい監督ですか、という質問に対し、プレスコットは首を少し横に傾け、ストーリーボードを数ページめくり、スカーレット・ヨハンソンがBMW X3に乗るシーンを開きました。「そうですね。私はドリフト・シーンについては納得がいくシーンが取れるよう、非常に厳しい要求をします。必要であれば5回や6回、いや、10回でも撮り直しをします。」そしてもう1つ、どうしても聞きたかった質問を。スタント・カーのドライバーは、誰でも運転がうまいのですか。プレスコットは不意に笑ってこう答えます。「交通渋滞に巻き込まれるとすぐにホッケー・リンクでサッカー選手のように振る舞うプロのドライバーやスタントマンを、何人か知っています。映画のセットとラッシュアワーの渋滞はどちらも厄介なものですが、まったく別の状況です。」

Photos: Lorem ipsum; Author: Markus Löblein; Video: Marvel

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