時速0マイルから60マイルへと加速するときの高揚感を味わえるんだ。僕たちの楽曲でも、もちろんBMW M8でも。
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心を揺さぶるメカニズム
ディミトリ・ヴェガス&ライク・マイクが座るのはBMW M8のリアシートではなく、運転席と助手席。向かう先は、ノルウェーで開催される「ウインターランド・フェスティバル」。彼らの次の成功を握る大きなステージだ。ディミトリ曰く、彼らの楽曲のキーとなる要素はドロップ(曲の一番盛り上がる箇所)。「エレクトロニックミュージックのドロップは、ポップミュージックのコーラスと同じように、楽曲のクライマックス。ビートとメロディーが弾けて解放される前にリズムが一旦落ち着く静けさが次への期待感を煽る。このごく短い瞬間が非常に重要。そしてビートを加速させ、そしてまた緩ませる。それが自分たちのスタイルだ。その感覚は、背もたれに押し付けられ前方へ加速するとき、まさに時速0マイルから60マイルへ加速するときに覚える感覚と同じ。綿密に計算されたダイナミクス – それこそが純粋な高揚感なんだ。」とディミトリ。「それはまさにBMW M8を運転しているときに味わう、これ以上ないエモーショナルな感覚なんだ。」そう言ってマイクも笑顔でアクセルを踏む。もちろんこの瞬間に心地よい音楽を奏でるのはBMW M8のエンジンだ。
僕たちは「何をしなければならないか?」なんて思わない。ただ「何をしてやろうか?」もしくは「何がしたいんだ?」 ということだけだ。
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ディミトリ・ヴェガス&ライク・マイク:彼らのDNAに組み込まれたEDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック)
ディミトリ・アナスタシアス・ティヴァイオスとマイケル・ティヴァイオスには、幼い頃から音楽の血が流れている。それぞれ15歳と17歳の時に、兄弟はEDMの鼓動に魅了され、母国ギリシャからスペインのダンス・ミュージックの聖地、イビサへ渡る。
たった数年の間に、ディミトリ・ヴェガス&ライク・マイクは、まったくの無名な状態から、EDMのトップに昇りつめ、今日ではベルギーのEDMフェスティバル「トゥモローランド」のために楽曲を提供する、世界で最も影響力のあるプロデューサーとして活躍するまでになった。2019年にはイギリスの音楽誌「DJ Mag」で、最も人気のあるトップDJとして称された。(2015年にも同賞を獲得)
何かの先駆者になりたければ、時には譲歩もいとわない。
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記憶の中にある、サウンド・ライブラリー
過去の出来事や特定の経験を振り返ること。これこそがこのクリエイティブな2人のインスピレーションの源。「僕たちは思い出、特に僕たちが育った1980年代後半から90年代のさまざまな出来事からインスピレーションを引き出しているんだ。」とマイクは言う。「名作映画や画期的な音楽。当時リリースされた数多くの楽曲は今なお、リミックスされ、演奏され、これまで以上に新しいミックスも生まれている。僕たちは他にも、美しい景色、夕日、休日の記憶、車の運転時に感じるエモーションからもインスピレーションを得ているんだ」
妥協も厭わない先駆者


しかし、このようにして得たインスピレーションを音楽で表現することは、相手のアイディアを鵜吞みにするということではない、と彼らは口をそろえて言う。「僕たちは常に楽曲で、パフォーマンスで、新しい課題に立ち向かっている。自分自身のアイデンティティを保ちながら、新しい自分を見出さなければならない。その時、最も重要になることのひとつが、声を上げ、自分自身の意見を表明すること。」とディミトリ。当然衝突も起こる。「クリエイティブな2人が協働しようとすれば、これは当たり前のこと。常に摩擦は生まれるけど、自分たちが先駆者になるためなら、時には譲歩もいとわない。僕たちは「何をしなければならないか」ではなくて、「自分たちに何ができるか」そして「自分たちは何がしたいか」ということだけが重要。それぞれのトラックについて、2人のアプローチを組み合わせ、アイデアを交換し、メロディーを補完し合うことで、ベストなものを探すんだ。」とマイクも付け加える。
2人は常にスタジオで一緒に過ごすわけではない。それぞれ独自のクリエイティブ・プロセスがあるからだ。しかし、兄弟である彼らは、いつもお互いにフィードバックをする。おそらくお互いにとって、相手が最悪の批評家であることをマイクは認めている。最高のメロディーでないと、相手に認めてもらえないということだ。「マイクがリードするプロジェクトもあれば、僕がリードするプロジェクトもある。しかし、最終的な曲は、常に2人の個性を反映したもの。そのための妥協なら受け入れる。最終的には、これが僕たちの曲作りの手法なのさ。」とディミトリ。もちろん彼らの成功によって、その手法がうまくいっていることは証明済みだ。
「クルマは、新しい音楽を試す理想的な空間」
ノルウェーの夜に描かれた魔法の絵のように、眼前に広がるトロムソ。街明かりが水辺に反射する。BMW M8のリアシートに深く腰掛ける、ディミトリ・ヴェガスとライク・マイク。雪に覆われた道は、魅惑的なメロディーのように、ヘッドライトの光で煌めいている。この人気DJにとって、パフォーマンスからパフォーマンスへの移動は、休息を意味する。実際、彼らは飛行機、バス、クルマを利用して移動する。そのほとんどの時間を、後部座席で過ごすんだ、と彼らは言う。
スタジオを一度出ると、彼らのクルマは、デモバージョンを静かに聴き、進行中のレコーディングをテストするための完璧な空間へと変貌する(→さらに読む:The best songs to test car speakers ※リンク先は英語です)。「クルマで移動するときは、これまでのスイッチをすべてオフにし、静かに自分の音楽に磨きをかけることに集中するんだ。」とディミトリは説明する。ツアーでのパフォーマンスからのパフォーマンスの間の移動で、実際にハンドルを握って運転する時間は、彼らが望むほど多くはない。「僕たちはいつも、夏にイビサに帰れるようにしたいんだ。」それでも彼らにとって車内での時間は、目標達成のための手段ではなく、つかの間の自由で楽しい休息の時間となっている。「ちょっとスーパーマーケットまで行ってくるよドライブするのさ。」それが彼らの楽しみのひとつのようだ。


加速するサウンドトラック
彼らが分かち合うのは、自分たちの成功だけでなく、長きにわたって抱いているBMWへの情熱だ。「BMWはラグジュアリアスでありながらもスポーツ性が高い。ステアリング操作への絶対的な信頼がおけて、自分の思い通りに反応し、快適性と“純粋な走る歓び”とを兼ね備えている」とマイクは説明する。彼らのお気に入りモデルはBMW i8、BMW X5、BMW M8。ディミトリは特にBMW M8のカブリオレがお好みのようだ(→さらに読む:The best road trips for a convertible ※リンク先は英語です)。「いうまでもなく、夏のイビサ用にカスタマイズしてるのさ」とディミトリは付け加える。もちろん彼は、M8のエレガントなボンネットの下に、山道や長いストレートでパワーを発揮する、エンジンが隠れていることを承知している。しかし彼は、アクセルを目一杯踏んで加速を愉しむよりも、むしろのんびりと走行することを好む。結局のところ2人のアーティストは、毎日加速するサウンドトラックに取り組んでいるのだ。
写真提供:BMW、CNN; 記事:マルクス・ロブレイン