中田英寿が日本を旅する[宮城]

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中田英寿が、世界に誇る日本の本当にいいものとその作り手を巡る旅、‘にほんもの’。 現地に行かなければわからない、素晴らしい日本をご紹介します。

にほんもの

「また新しい施設が増えたんじゃない?」
真新しい建屋を見て、中田英寿が嬉しそうに声をかける。
「少しずつですけど、毎年進化しています。いい酒をつくるためにできることは全部やっていきたいんです」(新澤醸造店・新澤巌夫社長)

山形県との県境近くにある山あいの町、宮城県柴田郡川崎町。『伯楽星』、『あたごのまつ』などの銘酒で知られる新澤醸造店は、東日本大震災を機にこの地に酒蔵を移し、新しい酒造りに挑んでいる。

宮城と山形の県境にある新澤醸造店の川崎蔵には、古い酒蔵のような風情はない。だが、そこには美味しい酒を追求する最新の設備と、蔵人の情熱が詰まっている。

もともとは同県内の大崎市で1873年に創業した老舗の酒蔵だったが、新澤社長が25歳で杜氏になったときは、倒産寸前だったという。

「地元で販売していた『愛宕の松』は、まずい酒の代名詞でした(笑)。そこで2003年に『伯楽星』という新ブランドを立ち上げ、オンリーワンの日本酒、“究極の食中酒”をつくることにしたんです」

他の蔵を訪ね歩き謙虚に酒づくりを学び、何年もかけてデータを取り研究を重ねた。その結果、『伯楽星』は2005年に大手航空会社のエグゼクティブクラスに搭載されることになり、2010年にはサッカーW杯南アフリカ大会のオフィシャル日本酒にも選ばれた。海外からの注文もあり、それまでの借金も返せるようになった。「さあ、これから」というときに起きたのが東日本大震災だった。

「築140年の蔵は倒れてはいないものの全壊状態。幸い人的被害はありませんでしたが、酒瓶はほぼ割れ、在庫を失いました。このまま同じ場所で酒づくりを続けるのが難しい状況で、いったん休んで蔵を再建するか、移転するかの判断を迫られました。しかしもとの蔵を補修するにも限界があり、また同じような地震が起きたらという不安もありました。そんなとき、県内に休眠中の酒蔵があると知り、そこを買い取らせてもらうことにしたんです」

県内とはいえ、新しい川崎蔵は元の蔵から約80kmも離れていたため、多くの従業員が辞めることとなった。日本酒は繊細だ。温度や湿度、蔵にすみつく微生物などが独特の味を作り上げる。機械は移動できたが、蔵が変わり、人が変われば、味も変わってしまう。新しい仲間を迎え、新しい蔵での試行錯誤の日々が始まった。

中田は震災の前から新澤社長を応援してきた。たびたび蔵を訪れ、新澤社長と酒談義を交わす。「贔屓目ぬきに、新澤醸造店の酒は年々進化していると思います」

「後ろを向いても仕方がない。新しい蔵に移ったんだからダメになったとは絶対に言わせない。より美味しくなったといわれるようにしなければならないという思いはありました。そのための“武器”になったのが、豊富な地下水でした。新しい蔵にはこれまでにない量の地下水がありました。酒質において、米の糠をとる洗米はとても大切な作業。これまでよりも大量の水をつかうことで、米をよりきれいに洗えることができるようになりました。これまでベテラン従業員の感覚に頼っていた部分は、なるべく機械をいれて、安定した品質を保てるようにしました。もちろん機械にばかり頼っていてはダメ。若い人たちにはどんどん勉強してもらって、さらなる酒質の向上を目指しています」

新澤社長の挑戦が結果を出しているのは、近年さまざまな酒のコンペティションで新澤醸造店の酒が上位に入っていることからも明らかだ。むしろ震災前よりもその評価が高まっているといっても過言ではないだろう。それでも彼は徹底的にこだわる姿勢を止めることはない。品質管理のため移転の際にはなかった冷蔵棟を次々と新設し、すべての酒を冷蔵貯蔵できるようにしている。新澤醸造店の人気酒のひとつ、中田も愛飲するヨーグルトリキュール『超濃厚ヨーグルト酒』は、風味を保つためラベル貼りまで冷蔵室で行っている。

清潔に保たれた蔵の内部。徹底的な品質管理にこだわり、冷蔵設備を毎年のように増設しているという。

「伝統も大切ですが、やっぱり日本酒でいちばん大事なのは味。新澤醸造店は積極的に新しい技術を取り入れて、進化し続けている。僕は毎年のみ続けているからその進化を自分の舌で感じています」(中田)

伝統と革新、ものづくりにおいてよくつかわれる言葉だ。新澤醸造店は震災によって伝統を失い、革新の道を選ぶしかなかった。蔵が変わり、人も変わった。それでもその信念は失うことがなかった。だからこそ、いまがある。そして、その新しい蔵から新しい伝統が生まれつつある。変化を恐れず、進化し続ける。それは新澤醸造店の伝統として、100年200年と受け継がれていくのではないだろうか。

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