国際芸術祭「あいち2022」連携企画事業として展示されたインスタレーション「Kizuki-au 築き合う-Collaborative Constructions」。展示場所ともなった常滑の地に、作者である小渕さんとともに歴史を学びに訪れてみた。


小渕准教授が率いる東京大学建築学専攻の小渕ラボ―T-ADSの
プロジェクト作品が展示されている、愛知県常滑市へ
日本に最先端のコンピューテーショナルデザインを導入し、プログラミングや3Dモデリングを駆使するデジタルファブリケーションの研究者。2010年から東京大学建築学科にて小渕研究室を主宰。作品を手掛けたT_ADSは、隈研吾研究室・千葉学研究室・小渕祐介研究室が先端デザインスタジオとして設立し、これまでにさまざまな領域での活動を行ってきた。
ETH Zurich、スイス大使館スイスと日本の協働プロジェクトである、インスタレーション「Kizuki-au 築き合う-Collaborative Constructions」
小渕ラボが手掛けた作品は会場の入り口部分。吊り下げられた陶器は常滑市の作家・冨本大輔さん、池谷幸子さんが制作。大小異なるものをネックレス状に組み合わせ、14名の人間が持った状態をデータ化。コンピューターによって最適な設置場所を計算し、自動的にロボットが梁に穴を開け、人の手で吊り下げられた。梁に設置されたミストノズルから陶器へと噴射、五感で蒸散冷却効果を体感できる仕掛けになっている。
その小渕ラボのエントランスをくぐると、ETH Zurichのロボティック・ファブリケーション・ラボにより建設された、木造骨組みの3階建ての建物が現れる。日本が誇る「木造建築」で見られる伝統的技法を、スイスのデザインと技術によってネジなどの金属部品を使用せずに復興させたもので、建物を構成する5つの木造の骨組みモジュールが、1000を超える特注の木製エレメントによって見事に成立している。


小渕先生が考える、人に共感を与える建築をつくり出すこととは
「建築の民主化」をテーマに、誰もが簡単に建物を手掛けられるためのデジタルファブリケーションを研究する小渕さん。本作品では、ミストのほか風量で照明が変わる仕掛けも盛り込み、目でも涼しさを感じられるように。建築は一緒につくるだけでなく、その場にいる人の心を共通させることが可能と作品に思いを込めた。


常滑焼の歴史が垣間見られる「常滑やきもの散歩道」を歩いてみる
常滑焼が日本の近代建築史を変えたことを知り、この地に興味を抱いたと小渕さん。急須や土管、焼酎瓶にタイルと、さまざまなものを手掛ける常滑焼が、生活の中で自然に用いられるさまが見て取れるのが散歩道だと、小渕さんは焼酎瓶に触れながら話す。




常滑焼伝統工芸士のひとり、清水源二先生の工房を見学
「ロクロによる手作り急須」の常滑焼を手掛ける清水さん。ロクロが生む繊細な文様デザイン、手に馴染む表情の豊かさに小渕さんも驚く。「使い続けるから育ち、愛着も深まる」との清水さんの言葉に、建築や環境デザインの本質も同じことだと小渕さんは言う。
古い町並みにも馴染む高級感漂うエクステリアと
快適なドライビングパフォーマンスを実感
エンジン車同等のエンジンブレーキフィーリングの「普通」「低い」、通常走行ではほぼブレーキの出番がなくなる「高い」、そして「アダプティブ(自動調整)」の4つの回生ブレーキシステムを搭載。エクステリアではクローズド・タイプの専用キドニーグリルが印象的。




建築陶器による装飾の先駆けである
フランク・ロイド・ライトの代表作「帝国ホテル旧本館(ライト館)」
常滑焼の制作現場を見学した後は、歴史をびに「INAXライブミュージアム」へ。学び、触れ、創り出すことができる6つの館からなり、レストランも併設。関東大震災後、RC造が主流になった日本の近代建築の外壁を飾るタイルやテラコッタ(大型の建築装飾用陶器)の歴史を楽しく知ることができる。




陶工たちの技術と情熱が感じられる、壮大な装飾タイルを鑑賞
旅の締めくくりには、世界のタイル博物館へ。国内外の1000点以上もの装飾タイルが鑑賞可能で、中にはエジプトのピラミッド内部を飾ったとされる世界最古のタイルまで! 遠い昔から、人間は住まいを飾りたい! という欲求があったのだと痛感した。


プロフィール
常滑焼伝統工芸士 清水 源二さん
常滑でも数少ない「ロクロによる手作り急須」の技法を受け継ぐ常滑焼伝統工芸士。ろくろによる技術・技法の伝承はもちろんのこと、次代へとつなげる新たな土の研究にも携わる。
<クレジット>
text=Takeshi Tsuchihashi
photo=Ryusuke Honda(bird and insect ltd.)
movie director/editor=Shuma(bird and insect ltd.)
cinematographer=Daisuke Abe(bird and insect ltd.)
music=Go Hiyama (echoes breath)
produce=Discover Japan Inc.
今回訪れた場所
常滑やきもの散歩道
住所:愛知県常滑市栄町
北條陶房
住所:非公開
INAXライブミュージアム
住所:愛知県常滑市奥栄町1-130
https://livingculture.lixil.com/ilm/