世界でも注目を集めるビジュアルデザインスタジオWOW代表・高橋裕士さんが訪れたのは、自身のルーツでもある父の刀匠 法華三郎信房。兄である高橋栄喜さんと刀について話しながら、BMW M850i xDrive クーペとともに、ものづくりのルーツをめぐった。


宮城県は高橋裕士さんの故郷であり、仲間とともに「WOW」を立ち上げた場所。高橋裕士さんが率いる「ビジュアルデザインスタジオWOW」とは?
仙台からはじまり、東京にロンドン、サンフランシスコにも拠点を構えるビジュアルデザインスタジオ。CMやブランドコンセプトの映像表現、インスタレーション作品、UIや都市建築などジャンルを超えた幅広いビジュアルデザインの可能性を探る。10月15日から設立25周年を記念した「Unlearning the Visuals」を寺田倉庫にて開催。WOW独自のオリジナル作品を多数展示予定だ。
まずは高橋さんが生まれ育った原点、
刀匠法華三郎信房 日本刀鍛錬所を訪ねて
5代目の頃に備前伝に転向していたと伝わる法華家。8代目信房の時代に、もとにしていた大和伝保昌派(やまとでんほうしょうは)の作風の復元に成功。9代目の父・法華三郎信房がその作風を受け継ぎ、高橋栄喜さんとともにその技術と作風を受け継いでいる。本来は折返し鍛錬ができないといわれていた隕鉄での作刀。博物館から依頼され、9代目とともに2年の歳月をかけて完成させた。


作刀は砂鉄と炭で「鉄」をつくることからはじまる
現代刀で知られる法華三郎信房の大和伝。伊達政宗も愛したといわれる日本刀は、鎬の幅が広く、そして高いことが特徴のひとつ。さらに鍛錬によって現れる刀の肌模様である柾目肌、この整然と整う美しい様が高く評価されている。松山の粘土やもち米のワラ、和紙といった昔ながらの道具をそのまま用いる作刀の様子は非公開であるが、年に一度、1月5日に行われる打初式のみ見学が可能。




「日本刀のように、年月を経ても価値が変わらないものを創りたい」――高橋裕士さん
普遍性と変化。ものづくりへの向き合い方を知る。
日本刀の魅力を「怖さの中に宿る妖艶美」と表現する裕士さん。そのかたちと作刀方法をほぼ変えず、1000年残るもの、そして銘がなくても誰によって手掛けられたのかがわかる恐ろしいものとは栄喜さん。誰が、どう使うのか。誰に捧げるものなのかを真摯に考え、つくられたものづくりの根源が詰まっていると2人は語る。時代を経て変わらない美しさと変わる意味、その変化にものづくりを担う2人は真摯に立ち向かう。


最新モデルBMW M850i xDrive クーペの走りを実感するため一気に仙台市内へ移動
クーペらしいシルエットながら、生き物のような美しいライン。その佇まいと雰囲気にも惹かれる一方、V型8気筒BMWツインパワーターボガソリンエンジンの加速力に驚く高橋さん。思い通りのコーナーリングをかなえる安定性能は、「駆けぬける歓び」を追求するBMWならではの結晶。静音性はもちろん、まるでリビングにいるかのような快適なインテリア・デザインの完成度の高さにも唸る。




夜は仙台市内もドライブ
きらめくせんだいメディアテークの建築を外から愉しむ
“水中をゆらめく海草”と表現した束ねられた鉄骨を13本のチューブで支えたデザインが印象的な建物は、ギャラリーに市民図書館、カフェやミュージアムショップなどが集う文化・芸術の複合拠点。「提供する側」と「提供される側」の立場を常に反転させ、「最先端」を追求している。


車を走らせたくなる、格別に美しいインテリアと装備
シフトセレクターやスタート/ストップスイッチ、ダイヤルも含めて職人が一つひとつ仕上げるクリスタルガラス製品が「クラフテッド・クリスタルフィニッシュ」。運転の楽しさを引き立てるのは触れる度に伝わるクラフトスピリットのみならず、サウンドやデジタルコクピットなど五感へ刺激する細部のインテリア・デザインに宿る。
高橋さんの原点に立ち返ることのできる場所
「WOW」の仙台拠点へ
1997年に仙台からスタートしたWOW。2006年からはwowlabとして表現領域を広げる研究活動も開始し、『POPPO展』や『ハレとケ展』なども開催。東北の魅力を再解釈し、地域のクリエイターや職人、企業や大学とも連携した取り組みを行っている。オフィスは仙台駅前の商業ビル内にありながら、シンプルなデザイン。ゆとりある間取りと窓際に積み上げられた木材が印象的。端材利用の木材はベンチや机をはじめ、状況やアイデアに合わせて自由に組み替えて使うことが可能。




エントランスに“庭園”を生み出した
WOWが手掛けた作品のある「OF HOTEL」
旅の締めくくりにふさわしいホテルが2022年に誕生した。「LOCAL SESSION」をコンセプトに、東北の多様な文化を提案するライフスタイルホテルだ。丸石で構成されたエントランスは、庭園に見立てて東北の風景などをモチーフにしたWOWの映像作品を投射。仙台の魅力を体感した身に、新たな風景を描き出してくれる。


プロフィール
高橋栄喜さん
法華三郎信房の技を受け継ぎ、9代目とともに作刀を行う。自身の技術鍛錬はもちろん、日本刀の製法過程やメカニズムの研究に関するさまざまな機関への協力を行い、日本刀に宿る技術とメカニズムの検証も行う。
<クレジット>
text=Takeshi Tsuchihashi
photo=Ryusuke Honda(bird and insect ltd.)
movie director/editor=Shuma(bird and insect ltd.)
movie=Daisuke Abe(bird and insect ltd.)
music=Go Hiyama (echoes breath)
produce=Discover Japan Inc.
今回訪れた場所
法華三郎信房日本刀鍛錬所
住所:宮城県大崎市松山
www.hokkesaburo.com
せんだいメディアテーク
住所:宮城県仙台市青葉区春日町2-1
WOW inc. Sendai
住所:宮城県仙台市
OF HOTEL
住所:宮城県仙台市青葉区花京院1-4-14