ジェフ・クーンズ:意味がすべて

この記事を読むのに必要な時間:約4分
ジェフ・クーンズとBMWの最新のコラボレーションは、BMW 850i xDriveをハンド・ペイントで表現した「THE 8 X JEFF KOONS」です。このスペシャル・エディションは2022年春に登場予定となっていますが、それに先駆けて、この特別なモデルがどうして誕生したのか、クーンズに話を聞くことができました。今回は、単なる自動車を超えた存在であるこのモデルについて、詳しくご紹介します。

2021/12/20

BMWにとって、ジェフ・クーンズはなじみの深い人物です(➜ もっと読む:ジェフ・クーンズと、リーダーシップという芸術)。彼は2010年に、BMW M3 GT2をカラフルな縞模様と爆発を表現するモチーフで装飾しました。このモデルは一世を風靡し、その年のル・マン24時間レースに出場を果たしました。

現在、クーンズのBMW M3 GT2は、BMWアート・カー・コレクションに加えられており(➜ もっと読む:Wild at Art: BMWアート・カーの歴史)、今や彼はアンディ・ウォーホル、アレクサンダー・カルダー、ロイ・リキテンスタイン、そしてデイヴィッド・ホックニーといったBMWアート・カーのクリエーターの一人として名前を連ねています。

そのクーンズが、THE 8 X JEFF KOONSとともにBMWへ戻ってきます。スペシャル・エディションBMW 850i xDriveは、すべてがクーンズのイメージでつくられたモデルであり、彼と製作チームが膨大な時間を費やした、極めて精緻なハンド・ステンシルで仕上げられています。初披露されたのは、毎年イタリアのコモ湖で開かれるコンコルソ・デレガンツァ。高級感と独自性にあふれたこのイベントは、まさにこのモデルにふさわしい舞台でした。チケットを手に入れることができなかった方は、来春の登場まで楽しみにお待ちいただければと思います。

クーンズの創作中の思いや、このモデルにどんな可能性を見出しているのかについて、彼にインタビューをさせていただきました。

意味が独自性を生む

「このモデルには、このモデルならではの存在理由があります」このクルマが持つ独自性について聞かれたクーンズは、そう答えます。

「人生において、経験は重要なものですが、この経験こそがこのモデルの存在理由であり、同時に、このモデルの価値を高めています」とクーンズは語ります。「あるものが独自な存在になれるのは、他者に対して特別な意味を伝えることができたときです。それをできるのが、このTHE 8 X JEFF KOONSなのです。視覚的には、スリリングな外観をしていますが、このモデルを特別だと感じるのは、見た人自身がこのクルマに特別な意味を見出すからなのです。ドライバーも同乗者も、このクルマのパワーを体験し、そこから何かを感じることが重要なのです」。

私たちが使うツール

BMW 8 X KOONSを創作するために、クーンズと製作チームは膨大な時間をかけてエクステリアの設計とハンド・ペイントを行い、オーダーメイドのインテリアを精巧に作りあげました。新たな芸術表現としてデジタル・アートが流行している今、クーンズの創作手法や、この分野の芸術の未来はどうなるのでしょうか。これまではアートコレクターにとってもアーティストにとっても、職人の技術は、品質を保証するものとして考えられていましたが(➜もっと読む:アートコレクターになる方法※リンク先は英語です)芸術がスピーディーでデジタルな世界で創造されることが増える中で、今後どうなっていくのでしょうか。

「人間である私たちが開発したツールは、常に問題を解決するため、あるいはコミュニケーションを助けるために設計されてきました」とクーンズは言います。「しかし、重要なのは、ツールそのものではありません。意味を生みだすためにこうしたツールをどう使うべきか、こうしたツールが持つ潜在的な可能性は何か。それが重要なのです。例えば、このモデルの創作にはテクノロジーを活用しています。しかし、違いを生みだすのは、クルマに対する私たちの生物学的反応なのです。テクノロジー自体が答えでは決してありません」。

芸術は私たちの正体そのものである

私たちが芸術を目にして反応したとき、芸術は初めて芸術になります。それがどのように創造されたかは関係ありません。しかし、創作者自身にとってはどうなのでしょうか。BMWアート・カーを創造するプロセスは、創作者自身にどのような意味をもたらすのでしょうか。

「芸術は、創造者としての限界を超え、私がもっと大きな人間になれるように助けてくれる存在だと信じています。芸術は私たちに刺激を与え、私たちと外界との関係だけでなく、私たちの内面についても理解できるよう導いてくれます。芸術は私たち自身が持つ可能性の本質であり、私たちの正体そのものなのです」とクーンズは語ります。

“POP! POP! POP!”

観る者の感覚を刺激することは、クーンズの作風になっています。彼の作品は、物理や規模、素材について、常識的な概念や体験に挑み、クーンズ自身もまた、自由奔放な精神を大切にしています。これまでにも大成功を収めてきたこのスタイルが、今回の最新作にも活かされています。

「BMW 8 X KOONSのデザインは、2010年に初めて製作したアート・カーから着想を得たものです」とクーンズが打ち明けます。「あのときはレンチキュラー技術を使いたかったのですが、車体が重くなるので現実的でないという結論になりました。そこで、プランBへ切り替えることにしたのです。プランAでつくりたかったクルマは、「POP! POP! POP!」というような躍動感を表現するものでしたが、同時に、クルマに手を加え過ぎたくないとも考えました。結果として、とてもスリリングな作品に仕上がりました。すべてを手作業で塗装し、クルマ自身が持つ意味を正確かつ明確に伝えています。パワー、スピード、存在理由といったすべてが、色やテクスチャ、表現全体に埋め込まれているのです。車内のどこへ座ろうとも、あのクルマの本質を体感することができます」。

歓びを伝える世界共通の言葉

秋のコモ湖でクーンズと話を続けるうちに、ペンシルバニア出身のクリエーターである彼は、今この瞬間を超えたところにある疑問に深く浸っていました。そして、その瞬間、私たちが何に心を奪われていたのか、気づくことができました。

「私たちにできる最善のことは、自分の興味に従うことです」すべてをやり遂げたあとにモチベーションをどう保つのか?という問いに対して、クーンズはそう答えました。

「そうすれば、あなた自身にとって重要なものや、世界共通の言葉や情報に出会うことができます。これが私のスタイルです。受け入れる、決めつけを捨てる、すべてに対してオープンになる、そうできるよう努めています。私を導き続けているのは、このような哲学です。好奇心を忘れず、関心を持つこと。これらを実践する私の毎日は、歓びに満ちています」。

クーンズの哲学がどのようにしてTHE 8 X JEFF KOONSで具現化されているか、皆さんが目にする日はそう遠くありません。一般公開は2022年春の予定です。

そのときまで、もう少しだけ、クーンズのように好奇心を持ち続けましょう。「POP! POP! POP!」な作品をつくることにどのような意味があるのか、感じ取れる日が来るまで。

2022年春にTHE 8 X JEFF KOONSが披露されるころ、ぜひまたBMW.COMをご覧ください。

著者:デイヴィッド・バーンウェル;写真:ムスタファ・アブドゥルアズィーズ