

高級市場向けのアップサイクル:ダリュール・コックス・ジュニアは、故郷オレゴンの広大な森と、シュルレアリスム・アートにインスピレーションを受け、樹木から落ちた枝を額縁に溶け込ませた、奇抜な「フュージョン・フレーム」をつくりあげました。ダリュール・コックス・ジュニアは作品のコンセプトについて、「天然の素材を組み合わせて、ひとつのアート作品にしたいと思っています。明確かつ独自性があり、複雑でありながらシンプルな作品に仕上げることをめざしています」と語ります。父親が大工で、母親が独自のスタイルを持つ革新的アーティストであるダリュール・コックス・ジュニアが、木を素材とした新たなアートに挑むのは、自然なことだったのかもしれません。
「私が磨きあげたステンレス鋼製のアート作品は、周囲のあらゆるもの、美しいとは言いがたいものでさえも、美しい姿に変えます。気まぐれな心や遊び心を表現したいと考えています」
ローマ教皇に自身の作品を献上されることほど、わかりやすい成功はありません。このような機会はアーティストにとって、自らを見直すチャンスにもなります。1998年、ブルガリア人彫刻家兼工芸家ラド・キロフが制作した銀の聖杯が、南アフリカ大統領ネルソン・マンデラからヨハネ・パウロ2世に献上されましたが、キロフはこれを機に、自らの作風を見直しました。献上されて以降、創作の中心をステンレス鋼にシフトさせたのです。現在、キロフは、ここに挙げたステンレス鋼製のテーブルなど、印象的なコレクションやコンテンポラリーな高級ファニチャーを創作しています。キロフの作品は、光を反射する液体のようなステンレス鋼と天然の木という、対照的な素材を組み合わせています。このスタイルはキロフによって「Mercury Effect(水銀効果)」と命名されています。


ドイツ人デザイナー、ティモシー・シュライバーは、オーガニックなフォルムと幾何学的なスタイルを組み合わせ、独創性あふれる長椅子をつくりだしました。ティモシー・シュライバーが生みだすファニチャーは、微小細胞の構造など、自然界に存在する形状とパターンからインスピレーションを得ています。
その結果、Morphogenesis(形態形成)長椅子は、思わず感嘆してしまうほどスタイリッシュなデザインに仕上がりました。この長椅子はなめらかな流線型と優れた機能性を持ち、空間に独自の印象を加え、インテリアデザインの概念をつくりかえています。シュライバーは、北京国家水泳センター(通称:ウォーターキューブ)の設計にも携わっており、「作品を通じて、建築、デジタル、社会・環境のサステイナビリティ、などの分野の境界を冒険したいと思っています」と語ります。


Wave city(ウェーブ・シティ)は、まさに夢の世界を形にしたような、唯一無二のテーブルです。ステリオス・モーサリスが手がけたこのシュルレアルなコーヒー・テーブルは、アカデミー賞を受賞した大ヒット映画「インセプション」からインスピレーションを得ています。湾曲した内部には都市の風景が組み込まれ、ビルのてっぺん同士が触れ合いそうに見えます。折り重なった部分をテーブル表面として使うよう設計された、非常に珍しいデザインだといえるでしょう。ビルのシルエットは3Dプリンティング技術を駆使して精巧につくられており、このテーブルを置くことで、その空間にレアリズムの雰囲気が増すことは間違いありません。
キプロス人の家具デザイナー ステリオス・モーサリスは、自身のデザインスタジオを設立する以前、著名な建築会社Fosters + Partnersの模造製作者として働いていました。


2つの対照的なエレメントを融合させた、印象的なデザインを得意とするチェルノは、独創的な照明を製造する会社として高い評価を得ています。カリフォルニアを拠点とする同社では、インダストリアル・デザインと自然素材を組み合わせて、最高品質のコンテンポラリーなファニチャーを生みだしています。そのひとつ、なめらかなアルミニウムと天然のウォールナットのスタンドを組み合わせた、アバンギャルドなValeo Floor Lamp(Valeoフロアランプ)は、インテリアとして独自の存在感を放っています。「私たちが目指すのは、モダニズムとコンテンポラリー・デザインの融合です。固定具は最小限に留め、すべての機能に目的を持たせ、本物の素材を使ってエレガントに仕上げています」と、デザインディレクターのニック・シェリダンは言います。