驚異の技術: 傑出した12のBMWエンジン

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BMWのベスト・エンジンとは?と聞かれても、絞り込むのはなかなか至難の業です。人によって意見は異なり、事実私たち編集チームでも5人のメンバーがそれぞれに異なる見解を持つことがわかりました。白熱した議論によって、リストアップと取捨選択を何度も繰り返し、ようやく結論を出すことができました(まだ少し迷いはありますが…)。さて、この結果はあなたにとってのベスト・エンジンと同じでしょうか?ぜひ記事を読んで、お確かめください。

2020/11/5

BMWはその名前自体に象徴的なメッセージが込められています。3つの頭文字の真ん中のMは、「モトーレン」すなわちエンジンを表しています。それは、会社の始まりを意味すると同時に、何十年にも渡って世界をリードしてきたエンジン技術とそれを搭載したさまざまな輸送機器を示しています。航空機であれ、オートバイであれ、そして自動車においては言うまでもなく、BMWはエンジンのパイオニアです。そのため私たちは、伝説的なBMWエンジンを1つに絞るのではなく、12の傑出したエンジンを選ぶことにしました。可能な限り客観的に、しかし必要に応じては主観的な意見も加味しつつノミネートしているため、この選択だけが正解ではありません。突き詰めれば、すべての車好きの視点はそれぞれに異なるため、このリストはあくまでも議論のためのたたき台とお考えください。

1.

BMW IIIa:航空機用直列6気筒 エンジン(1917年)

© BMW Group Archiv

 

今やBMWは、二輪車および四輪車における「駆けぬける歓び」の象徴です。しかし、創立当初であればこのスローガンは「空を飛ぶ歓び」だったかもしれません。なぜなら1917年、BMWすなわち「バイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ(バイエルン発動機製造会社)」によって最初に開発されたエンジンは、BMW IIIaという航空機用のエンジンだったからです。このエンジンは、高高度での性能低下を防ぐ洗練された技術設計を特徴としていました。さらに1919年、改良型のMotor IVモデルが32,021フィート(9,760メートル)の最高高度記録(非公式)を樹立します。この先駆的な開発と製造への信頼性によって、BMWは設立まもない企業でありながら、業界をリードする存在としての地位を早くも確立していくのです。

エンジンの詳細
水冷直列6気筒エンジン(キャブレター方式)
エンジン排気量:19.1リッター
エンジン出力:140 kW〔185ps〕

2.

2気筒ボクサー・エンジン:BMW R5モーターサイクル用(1936年)

 

航空機からモーターサイクルへ。今日でも、BMW R5の話題になるとバイク愛好家たちは目を輝かせます。このマシンに搭載された500ccのボクサー・エンジンは、当時としては驚異的な24psの出力を発生しました。技術上での注目すべき特徴は、2本のカムシャフトによって制御されるバルブ・システムでした。R5は発売後すぐに、その信頼性と堅牢性によって高い評価を獲得します。ちなみに、R5に採用されたフット式のギヤシフトは当時まだ目新しいものでしたが、のちにこれがスタンダードとして定着していくのです。R5の開発で培った技術やアイデアは、今日のBMWモーターサイクルたとえばR18などにも受け継がれています。R5のエンジン&バルブ・カバーのデザインが、現代のBMWクルーザーに対応するパーツに踏襲されていることからもそれがわかります。

エンジンの詳細
2気筒ボクサー・エンジン
エンジン排気量:500cc
エンジン出力:18kW〔24ps〕

© BMW Group Archiv
3.

直列6気筒エンジン: BMW 328搭載(1936年)

© BMW Group Archiv

 

1936年、BMW 328に搭載された伝説的なエンジンによって、BMWは「ドイツ製のドライブ・ユニットは極めてスポーティである」という評判を得て、その名を世界に知らしめることになります。スポーティさという点では、BMW 326に搭載された6気筒エンジンも、もう一つの傑出した例と言えるものでした。BMW 326のエンジンでは当時最新のアルミ製シリンダー・ヘッドが採用され、さらなる改良を加えたBMW 328では約80psまで出力を向上、そしてエンジン最高回転数は5,000rpmを超えるものとなりました。後輪駆動方式およびわずか800kgの総重量と相まって、このスポーツカーはなんと80年以上も前から、本格的なドライビング・マシンとしての才能を備えていたのです。

エンジンの詳細
直列6気筒エンジン
エンジン排気量:2.0リッター
エンジン出力:59kW〔80ps〕

4.

V型8気筒エンジン: BMW 502搭載(1954年)

抑揚の効いたボディと流麗なラインにより、「バロック・エンジェル」の愛称で親しまれたBMW 502。しかしその内側に、バロックを思わせる華美なイメージは少しもありませんでした。世界初となるこの量産型のV8アルミ合金エンジンをはじめ、ブレーキ・ブースター、パワー・クラッチ、のちに標準装備となるディスク・ブレーキなど、このモデルは当時の最先端技術の粋を結集していたからです。実際、警察や消防などの機関からもBMW 502は高い評価と信頼を獲得し、緊急車両として採用されていました。しかし、誰が運転したとしても、BMW 502の最大の特徴が、心を動かすBMW のV8エンジンであることに変わりはありません。

エンジンの詳細
V型8気筒エンジン(キャブレター方式)
エンジン排気量:2.6リッター
エンジン出力:74kW〔100ps〕

© BMW Group Archiv
5.

4気筒ターボ・エンジン: BMW 2002 Turbo(E20)搭載(1973年)

© BMW Group Archiv

 

50年前、ターボチャージャー付きの量産エンジンは、今日の4速マニュアル・トランスミッションと同じくらい稀な存在でした。“Turbo on, gas gone”や“Turbo commemorative second”(いわゆるターボラグ)など過去によく聞かれたフレーズも、自動車業界ではほぼ耳にすることがなくなっていました。しかし、BMWだけはターボ・エンジンに対する情熱を失わずにいたのです。新たに2リッターのターボを開発し、これを搭載したBMW 2002 Turboは1973年当時では驚異的な170psを発生し、最高速度211 km/hを達成。本格的なスポーツカーのパフォーマンスを実現したこのモデルは、ターボチャージャーを搭載する欧州初の市販車となりました。今日ターボチャージャーが車両のエンジンをより効率的にするための重要なテクノロジーとなっていることは、もはや説明するまでもありません。

エンジンの詳細
4気筒ターボ・エンジン
エンジン排気量:2.0リッター
エンジン出力:125kW〔170ps〕

6.

直列6気筒エンジン: BMW 3.0CSLレーシング・クーペ(E9)搭載(1974年)

1980年代末には、「マルチ・バルブ・エンジン」が普及してきます。自動車レースにおける4バルブ技術が、量産車にも次第に採用されるようになったためです。1974年、BMW 3.0CSLレーシング・クーペに搭載された伝説的なエンジンのように、この技術はエンジン出力の大幅な向上を実現しました。量産バージョンは206psを発生する2バルブ形式でしたが、レーシング仕様では4バルブ・シリンダー・ヘッドと3.5リッターのエンジン排気量によって440psを達成しています。その一方で、マルチ・バルブ・システムは燃費性能にも寄与し、今ではエンジン設計の主流となっています。

エンジンの詳細
4バルブ直列6気筒エンジン
エンジン排気量:3.5リッター
エンジン出力:324kW〔440ps〕

© BMW Group Archiv
7.

4気筒ターボ・エンジン: BMW Formula 1レーシング・カー搭載(1983年)

© BMW Group Archiv

 

大排気量エンジンから、小型高出力エンジンへ。排気量わずか1.5リッターの「小型」パワー・ユニットでありながら、1980年代のBMW Formula 1エンジン出力は、とてつもないものでした。練習セッション(フリー走行)で使用されたバージョンの出力は1,200psに達していたとも噂されています。このような爆発的なパフォーマンスを操るにはドライバーにもより高度なテクニックが求められ、これは電子制御のドライバー・アシスト・システムが開発されるまで続きました。

モータースポーツで培った技術とノウハウは量産モデルの開発にも反映されていますが、このBMW Formula 1エンジンが現在のダウン・サイジング(性能を損なうことなく、燃費を改善しながらエンジンのサイズを小さくする)の先鞭をつけたことは明らかです。

エンジンの詳細
4気筒ターボ・エンジン
エンジン排気量:1.5リッター
エンジン出力:1,200ps(F1フリー走行において)

8.

6気筒ディーゼル・エンジン: BMW 524td(E28)搭載 (1983年)

エンジン製造開始から60年以上が経ち、BMW初のディーゼル・エンジンを搭載したBMW 5シリーズがデビューします。満を持して登場したそのエンジンは、非常に素晴らしいものでした。最高出力115ps、最大トルク210Nmという当時のディーゼル・エンジンの中でも並外れた性能は、まさにもうひとつの「駆けぬける歓び」を約束するものだったのです。私たちはこれを、BMWの“ベスト・ディーゼル・エンジン”に選びました。かつてはトラックやトラクターにのみ使用されていたディーゼル・エンジンも、今では多くの乗用車に採用されるようになりましたが、BMW 524tdはパワフルで快適、そして何より経済的でクリーンなディーゼル・エンジンの先駆けであったと言えるでしょう。

エンジンの詳細
6気筒ターボ・ディーゼル・エンジン
エンジン排気量:2.4リッター
エンジン出力:85kW〔115ps〕

© BMW Group Archiv
9.

V型12気筒エンジン: BMW 750i(E32)搭載(1987年)

© BMW Group Archiv

 

当時、12気筒エンジンが最強であることは疑いようのない事実でした。そしてBMW V12エンジンは今もなお、エンジンの滑らかさと余りあるパワーにおいて、非の打ち所のない存在です。特にBMW 750iは、第二次世界大戦以降では初の12気筒エンジンを搭載したモデルでした。BMW 750iのV12エンジンは、このモデルの最上の快適性と卓越したパフォーマンスを妥協なく追求する上でも大きな役割を果たしています。このパワー・ユニットの驚くべき回転の滑らかさを実証するテストとして、エンジンの端に1枚のコインが置かれました。結果、エンジンが回転している間、そのコインが落ちることはありませんでした。そしてこのエンジンでの成功が、「エンジンの滑らかさ」を特徴とする電気エンジン(以下を参照)への道筋をつけることになるのです。

エンジンの詳細
V型12気筒エンジン
エンジン排気量:5.0リッター
エンジン出力:220kW〔300ps〕

10.

V型10気筒エンジン: BMW M5(E60)搭載(2004年)

12気筒エンジンから10気筒エンジンへ – 
快適志向からスポーツ志向へ。完全に再設計されたパワートレインは BMW 5シリーズ(M5およびM6(E63/E64))に搭載され、7,750rpmで500psを発生。これは、当時のF1に採用されていた10気筒エンジンにもインスパイアを受けて開発されたものです。
社内的にS85として知られるこのエンジンは、BMW唯一の10気筒パワー・ユニットであり、バイエルンのエンジン・メーカー、BMWの歴史の輝かしいハイライトになっています。

エンジンの詳細
V型10気筒エンジン
エンジン排気量:5.0リッター
エンジン出力:373kW〔507ps〕

© BMW Group Archiv
11.

電気エンジン: BMW i3(I01)搭載(2013年)

© BMW Group Archiv

 

 

BMW i3によって、BMWは電気自動車における先駆者としての地位を獲得しました。この電気自動車によって、ドライバーは航続可能距離の不安が軽減されました。(→詳細はこちら:電気自動車に関する10の通説)。BMW i3を初めて運転したドライバーは、EVの運転の愉しさを思いがけず体験することになります。その圧倒的な加速によって、すべてのシグナル・グランプリを制し、満面の笑みを浮かべることができます。その一方で、i3は走行中に充電できるシステムなどを駆使し、より効率的なドライビングをサポート。刺激的な走りとともに、節約する歓びも手にすることができます。

エンジンの詳細
電気エンジン
エンジン出力:12kW〔170ps〕
バッテリー容量:37.9kWh

CO2排出量 0 g/km(複合)
燃料消費 0L/100 km(複合)
電力消費 14.6~13.1 kWh/100 km(複合)
12.

ハイブリッド・エンジン: 3気筒エンジン&電気モーター BMW i8(I12)搭載(2014年)

BMW i8は、電気自動車とスポーティ・ドライビングが相反するものではないことを証明しています。3気筒ガソリン・エンジンと電気モーターの2つの駆動システムを組み合わせたこのハイブリッド・モデルは、驚異的な362psのシステム最高出力を実現。内燃エンジンが後輪を、電気モーターが前輪を駆動する設計がこのモデルの極めてスポーティな資質を物語り、データもそれを実証しています。0-100km/h加速は5秒以下をマークする一方で、複合燃費は小型車レベルという、まさに次世代を駆けぬけるためのスポーツカーです。BMW i8は多くの自動車専門家たちにも高く評価され、2019年から権威ある「Engine of the Year Award(エンジン・オブ・ザ・イヤー・アワード)」を5回連続で受賞。BMWのEV時代の素晴らしい幕開けを飾ったのです。

エンジンの詳細
3気筒ターボ・エンジン&電気モーター
エンジン排気量:1.5リッター
内燃エンジン出力:170kW〔231ps〕
電気モーター出力:96kW〔131ps〕
バッテリー容量: 11.6 kWh

© BMW Group Archiv

将来の展望

航空機エンジンから電気駆動まで、BMWエンジンの歴史は傑作で溢れていることがわかります。しかし、自動車の世界は絶え間なく変化しており、今回私たちが選んだベスト・エンジンのリストも不変ではありません。街中にはハイブリッド車や電気自動車が増えており(→詳細はこちら:電気自動車とプラグイン・ハイブリッド・モデルの特徴)、BMWは水素エンジンの開発も積極的に進めています(→詳細はこちら:モビリティの未来を創造する水素燃料電池車とは?)。ディーゼル・エンジンやガソリン・エンジンもますます経済的かつクリーンなものへと進化し、これらもまた未来の選択肢のひとつとなるでしょう。
いま現在のベスト・エンジンはこれが決定版かもしれませんが、今後もBMWによって革新的なエンジンが続々と生み出されることは間違いありません。それが内燃エンジンであってもPHEVや電気エンジンであっても、BMWのエンジン開発においては、これまで以上に「パワー・オブ・チョイス」つまり“選択する歓び”が広がっていくことは明らかです。

記事:ニルス・アーノルド:
写真: BMW Group Archive

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